アメリカ経済は本当に好調なのか? 数値が表す事実とは

11月5日に実施されたアメリカ大統領選挙では、共和党候補のトランプ氏が勝利し、共和党は議会上下両院で過半数を確保しました。トランプ氏が掲げた選挙公約がどのように実行され、アメリカ経済にどのような影響を及ぼすかはまだ明らかではありません。しかし、その変化の可能性を正しく理解するためには、現在の状況を的確に把握することが不可欠です。

今日は、現在のアメリカ経済について、僕の考えを述べます。

目次

数値が表す事実からアメリカ経済をチェック

先日、友人とアメリカ経済について熱く議論しました。GDPや株価上昇、失業率低下など、マクロ経済指標では好調に見えます。

ここからはデータを元に、アメリカ経済の現状をチェックしましょう。

1) GDP成長率は上昇
2024年7~9月期の実質GDP成長率は前期比+2.8%。
内訳は、個人消費+3.7%、設備投資+3.3%、前期比0.7%増、年率は2.8%増。

2) 失業率は横ばい
10月の失業率は、前月比4.1%と横ばいで推移。労働市場は一見好調に見える。ただし、ストライキやハリケーンなどで働けなかった労働者は原則失業者としてカウントされていない。

3)個人消費支出(PCE)は上昇
10月の個人消費支出(PCE)は、前年同月比2.3%上昇。PCEは、個人が商品やサービスにどれだけお金を使っているかを示す指標のこと。経済成長の60%以上を占める重要な指標と位置付けられている。上昇は、インフレによる価格上昇が強まった影響と考えられている。

4) 株価は上昇
2024年後半も、S&P 500やNASDAQなどの主要株価指数は上昇。超大型7銘柄「マグニフィセント・セブン」が大きな原動力となっており、アメリカ経済は底堅いという見方がされている。

5) 住宅価格は上昇
アメリカ経済の健全性を反映するもう一つの重要な指標が住宅価格の動向。米連邦住宅金融庁(FHFA)よると、9月の米住宅価格指数(季節調整済み)は前月比で0.7%上昇。住宅購入希望者にとってはさらにハードルが高くなったことが読み取れる。

1)と2):株式会社第一生命経済研究所 米国経済マンスリー(2024年11月)参照
3):JIJI.COM参照
4):会社四季報参照
5):ロイター通信参照

アメリカ経済が持つ二面性とは

上記に記したマクロ経済指標を見ると、アメリカ経済は好調だと感じるかもしれません。

特に、GAFAM(Google /Amazon/Facebook ※現在はMeta Platforms,Inc/Apple /Microsoft)をはじめとする巨大IT企業や、NVIDIAのような半導体メーカーは、革新的な技術とサービスを提供し、世界経済を牽引しています。

しかし、その裏側では、中小企業が厳しい経営環境におかれています。大企業との競争激化や、高物価・高金利など、中小企業の経営を圧迫する要因はあとを断ちません。

アメリカにおける全企業の99.9%を占める中小企業は、GDPの44%を創出するなど、アメリカ経済の基盤を支える存在です。新規事業や事業拡張の原動力となる中小企業の動向は、そのままアメリカ経済全体の活性化に直結するため、その影響力は計り知れないのです。

インフレの影響も深刻

また、インフレも依然として問題視されています。連邦準備制度理事会(FRB)は、インフレが落ち着きを取り戻し、景気は底堅く推移しているとしていますが、インフレ率は高いままだと懸念する声もあります

特に住宅価格や生活必需品の価格が未だ上昇傾向にあることから、インフレの再燃につながる可能性は決して低く無いといえるでしょう。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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