なぜ今ウェルネスなのか?ミレニアル世代やZ世代が注目する心と体の健康トレンド深掘り解説│その1

さて、以前公開したCES 2025のレポート記事シリーズの中で、アメリカのミレニアル世代やZ世代の間で健康志向がすごく高まっている、という話に少しだけ触れました。

当記事では、「そもそも、なぜ今、アメリカではこれほどまでにウェルネスが注目されているんだろう?」という観点で、深く掘り下げてみたいと思います。

目次

背景1─身体が発するSOS、生活習慣病大国の現実と若者が抱く危機感

まず大きな理由として、アメリカが抱える深刻な健康問題があります。

ご存知の方もいるでしょうが、アメリカは肥満やそれに伴う生活習慣病が非常に大きな社会問題となってるんです。

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のデータによると、アメリカの成人の肥満率は40%を超え、深刻な肥満も約10%に達しています(※2017-2020年のデータなので、今はもっと増加しているはず)。

これは単に見た目の問題にとどまりません。肥満は、心疾患、脳卒中、そして特に「第2型糖尿病」のリスクを劇的に高めると指摘されているのです。

僕が話を聞いた若い世代、特にミレニアル世代やZ世代の中には、自分たちの親世代の食生活に対して強い疑問を持っている子たちが少なくありません。

彼ら自身、幼い頃からプロセスフード(加工食品)やファストフード、レンジでチンするだけの便利な食事を与えられて育った、と感じています。スーパーやコンビニで手軽に買える食品には、驚くほどの添加物が使われているので、彼らの気持ちもわかります。

そんな食生活の結果として、アトピー性皮膚炎のようなアレルギー疾患や、原因不明の体調不良、さらには精神的な不安定さを抱える子どもが増えているのではないか、という声も聞かれます。これはアメリカに限らず、日本でも同様の傾向があるのではないでしょうか。

こうした状況を受けて、今の若い世代は非常に熱心に「食」や「健康」について学んでいます。「親世代の無頓着さが自分たちの不健康を招いた」と感じ、ある意味で親を反面教師として、自分たちの手で健康を取り戻そうと一生懸命なのです。

ミレニアル世代とZ世代について

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世代名生年範囲現在年齢の範囲主な特徴
ミレニアル世代1981年~ 1996年頃概ね28歳 ~ 43歳・デジタル技術の普及と共に成長
・インターネットや携帯電話が普及の過程を経験
・リーマンショックなどを経験し、安定志向やワークライフバランスを重視する傾向
Z世代(Gen Z)1997年~ 2012年頃概ね12歳 ~ 27歳・生まれたときからインターネットやスマートフォン、SNSが当たり前にある環境
・多様性や社会問題への関心あり
・情報収集能力が高く、オンラインでのコミュニケーションを重視

背景2─デジタル社会がもたらす精神的ストレスと心の悲鳴

もう一つの大きな背景は、メンタルヘルスの問題です。

現代社会、特に前述の若い世代は、ソーシャルメディア(SNS)の世界と切っても切り離せない生活を送っています。Instagram、TikTok、Xなどを通じて、常に他人と自分を比較してしまう環境に置かれているのです。

「もっと痩せなくちゃ」「もっとキレイにならなきゃ」「もっとリア充じゃなきゃ」「もっと人気者にならなきゃ」

などと、他人の「キラキラした部分」と自分を比べ、劣等感や焦燥感に苛まれてしまう。フォロワー数や「いいね」の数に一喜一憂し、精神的に疲弊していく。今の時代、そんな若者が後を絶ちません。

ある調査では、アメリカのZ世代の約6割が、自身のメンタルヘルスに何らかの問題を抱えていると感じているのだとか。 身体的な不調だけでなく、こうした精神的なストレスもまた、人々をウェルネスへと向かわせる大きな要因となっています。「心身ともに健やかで、バランスの取れた生活を送りたい」という切実な願いが、今の社会には満ちているのです。

次回へ続く

次回は、こうした状況の中でウェルネスへの関心をさらに加速させている要因について、詳しく見ていきます。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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