前回の記事では、米中間の関税合戦が中小企業のサプライチェーンに与える影響について、私たちの取り組みを交えてご紹介しました。
今回は、関税強化が引き起こす“負の連鎖”について、さらに掘り下げていきます。
サプライヤー選定の難航と影響拡大
中国への高関税が現実となった今、多くの企業が中国以外のサプライヤーを探し始めています。
私たちが交渉している韓国のサプライヤーも候補の一つですが、同様の動きをする企業が急増し、注文が殺到。韓国の工場だけでは生産キャパシティが追いつかず、結局、「一部は中国の工場で製造せざるを得ない」という本末転倒な状況に陥るケースも出てきました。
生産遅延とコスト急増の現実
こうした混乱の中、当初計画していたリードタイム(発注から納品までの期間)は大幅に遅延。予定していた新商品ローンチに間に合わない企業も続出しています。
さらに、仮に製品が完成しても、関税が元のサプライヤー想定の3倍近く(245%となる可能性も)に跳ね上がれば、コストが全く見合わなくなります。これは、中小企業にとっては致命的な打撃です。
市場の冷え込みと経済不安
問題はサプライチェーンだけではありません。国際的な緊張の高まりは、株式市場にも波及します。
ニューヨークダウやナスダック、日経平均株価などが乱高下し、経済全体の先行き不透明感が増大。消費者の財布の紐も固くなり、私たちが扱うような嗜好品は真っ先に買い控えの対象となりやすくなります。
つまり、需要そのものが冷え込むリスクが高まっているのです。
物流停滞と予期せぬコスト増
さらに追い打ちをかけるのが「港の問題」です。仮に商品がアメリカの港に到着しても、高額な関税を支払わなければ貨物を引き取ることができません。多くの中小企業は、これほど高額な関税を想定しておらず、資金繰りが厳しくなり、商品が港で足止めされてしまうケースも懸念されます。
港はコンテナで溢れかえり、新たな船の荷下ろしも滞る……これはコロナ禍でも実際に起きた現象です。リードタイムはさらに伸び、商品は顧客の元へ届かず、売上機会を失うばかりか、保管料などの無駄なコストが発生する恐れもあります。
コスト増、納期遅延、需要減、資金繰り悪化、そして物流の停滞。まさに“負のスパイラル”が現実となっています。
米中間の安定した貿易関係が戻ることは、もはや期待できないと思います。相互の関係をゼロサムゲームと捉える国同士において、安定的な貿易や依存関係を築くことは極めて困難だからです。
いま私たちは「第二の冷戦」に突入していると言っても過言でなく、サプライチェーンこそがその最前線となっています。
負の連鎖を断ち切るための希望
しかし、こうした危機的状況の中でも、活路を見出そうとする動きが始まっています。次回は、逆境をチャンスに変えるためのヒントをお届けします。
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