前回は、ロサンゼルスのゴルフ場で出会った75歳のアメリカ人紳士、スコットさんと僕との間で、日米の「道徳」や「中庸」といった深いテーマについて語り合ったことをご紹介しました。
実は、このスコットさん、想像を絶するような壮絶な人生を歩んでこられた方だったのです。
今回は、彼の波乱万丈な半生に光を当て、いかにして逆境を乗り越え、「真のアメリカンドリーム」を体現したのかをお伝えします。
ディスレクシアによる苦悩の日々
スコットさんは、現在75歳。1950年生まれの彼は、大学を卒業していません。その理由は、高校時代に抱えていた「ディスレクシア(Dyslexia)」という病気が原因でした。
「ディスレクシア」とは、読み書き障害の一種で、文字を読むことや書くことに困難を抱える症状です。
彼の若い頃はまだ、この「ディスレクシア」という概念は一般にほとんど知られていませんでした。そのため、彼は学校の勉強についていけない自分を、周りからは「出来損ない」と見なされ、特に彼の父親からは厳しく扱われていたそうです。
文字が読めない、書けないという状況は、彼にとって計り知れない苦悩であったはずです。
ハリウッドにはトム・クルーズ、スティーブン・スピルバーグ、キアヌ・リーブスなど、ディスレクシアを抱えながらも世界的な成功を収めた著名人が多くいますが、それは彼らが人並み外れた努力を重ねてきた証でもあります。

全米トップレベルのテニスプレイヤーから路上生活へ
勉強が苦手な一方で、スコットさんには驚くべき才能がありました。
それは「スポーツ」です。特にテニスにおいては、高校時代にアメリカ全米トップ10に入るほどの腕前を持つテニスプレイヤーだったのです。昔のジミー・コナーズのような有名選手とも対戦する実力を持っていました。
若き日のスコットさんは、身長180cmを超える恵まれた体格。美しいブロンドヘアのハンサムな容姿も相まって、きっと誰もが羨むような存在だったことでしょう。
しかし、そんな彼の人生は予期せぬ転落を迎えます。父親との確執から勘当され、彼は住む家を失い、ロサンゼルスでの路上生活を余儀なくされました。輝かしいテニスプレイヤーとしての未来も、恵まれた家庭も、全てを失い、どん底へと突き落とされたのです。

どん底から這い上がって掴んだ「アメリカンドリーム」
路上生活から抜け出すため、スコットさんは建設現場で働き始めました。日雇いの仕事でコツコツとお金を稼ぎ、食べるために必死で働いたそうです。
そして、25歳頃のこと。彼は人生の転機となる診断を受けます。医者から「あなたはディスレクシアである」と告げられたのです。そこで初めて、彼は自分がなぜ読み書きが苦手なのか、その理由を明確に知ることができました。
自分の症状が「怠け」ではなく「病気」であったことを知ったスコットさんは、そこから猛烈な努力を始めます。誰よりも熱心に文字を学び、読み書きの能力を向上させました。
そして、建設現場で得た知識と、身につけた読み書きの能力を活かし、建設関連の事業を次々と立ち上げていきました。彼のビジネスは成功を収め、最終的には何十億もの富を築き上げたのです。
まさしく、自らの努力と才覚で逆境を乗り越え、「アメリカンドリーム」を体現した人物と言えるでしょう。

現在、スコットさんは事業を引退し、悠々自適にゴルフを楽しんでいます。今回、彼と出会ったペリカン・ヒルズのような、1ラウンド7万円もするような高級ゴルフ場を、気兼ねなく楽しめるほどの資産を築いているのです。
どん底から這い上がり、真のアメリカンドリームを体現したスコットさんの人生は、僕に計り知れない感動と勇気を与えてくれました。
そして、この彼の豊かな経験と知恵が、僕の温めていたあるビジネス構想と結びつき、新たな未来の扉を開くことになります。次回の記事では、この異色のコラボレーションの全貌をお伝えします。どうぞご期待ください。