「非日常」を求める時代へ:ホテル業界を席巻するウェルネスの最新トレンドとは?【前編】

目次

ホテルが提供する「非日常」に新たな価値が加わる時

旅行や出張で訪れるホテルは、私たちにとって日常から離れ、特別な時間を過ごす場所です。家とは違う快適なベッド、上質なアメニティ、そして非日常的な空間は、旅の疲れを癒し、気分をリフレッシュさせてくれます。

しかし今、この「非日常」に、さらに深い意味での価値が加わりつつあるのをご存知でしょうか?

それは、「ウェルネス」という概念の浸透です。 心身の健康と幸福を追求するウェルネスは、単なる健康法ではなく、ライフスタイルそのものを豊かにするキーワードとして、私たちの生活に深く根差し始めています。そして、このウェルネスの波は、今やホテル業界の未来を大きく変えようとしています。

コロナ禍が加速させた「自宅ウェルネス」の台頭

このウェルネス市場の急成長には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが大きく影響しています。

特に欧米、中でもアメリカのカリフォルニア州のような地域では、ロックダウンや行動制限により、多くのジムやフィットネス施設が閉鎖されました。これにより、人々は健康維持やストレス解消の場を自宅に求めるようになりました。

結果として、自宅に本格的なトレーニング機器を導入したり、一流ブランドのヨガマットやピラティス器具を揃えたりする動きが加速。特に富裕層の間では、自宅にいながらにして上質なウェルネス体験を追求する傾向が顕著になりました。

ホテル併設のフィットネス&リラクゼーションフロアのイメージ

変化する旅行者のニーズ:ホテルに求められる「心身の癒し」

コロナ禍を経て、人々は自分自身の健康と心のケアにより意識を向けるようになりました。この変化は、旅行や宿泊のスタイルにも大きな影響を与えています。

かつてのホテル選びは、価格や立地、設備の充実度が主な基準でした。しかし、今はそれらに加え、「心身をどれだけ癒せるか」「健康的な体験ができるか」といったウェルネス要素が重視されるようになってきています。

例えば、出張で忙殺されるビジネスパーソンは、短時間でも効率的にリフレッシュできる空間を求めます。観光目的の旅行者も、ただ観光地を巡るだけでなく、宿泊施設での滞在を通じて心身ともにリフレッシュし、より豊かな旅行体験を得たいと願うようになりました。 このようなニーズの変化に応えるため、ホテル側も従来のサービスだけでは差別化が難しくなっています。そこで注目されているのが、ゲストのウェルネスをサポートする高品質なサービスや施設の提供です。

ラスベガスの一流ホテルが示す未来

ウェルネスは強力なマーケティングツール

このトレンドを象徴する動きは、特に先進的な海外のホテル業界で見られます。例えば、世界のエンターテイメントの中心地であるラスベガス。ここでは、ベラージオ、MGM、シーザーズといった名だたる高級ホテルが、独自の「ウェルネスフロア」を導入しています。

驚くべきは、そのマーケティング戦略です。ラスベガスといえば、カジノや華やかなショーで知られ、刺激的な非日常を提供する場所。しかし、これらのホテルはあえて、「思いっきりギャンブルして疲れたら、我々のウェルネスフロアで心身ともに癒しましょう」というメッセージを発信しているのです。

これは、ギャンブルという刺激的な体験の後に、究極のリラクゼーションとリフレッシュを提供することで、顧客満足度を最大化し、リピーターを増やすという、非常に巧妙な戦略と言えます。

彼らは単にジムやスパを提供するだけでなく、ウェルネスに特化した客室アメニティ、専用のフィットネスプログラム、健康的な食事オプションなど、包括的なウェルネス体験をゲストに提供しています。 この事例は、ウェルネスが単なる付加価値ではなく、ホテルのブランド価値を高め、顧客を引きつける強力なマーケティングツールとなっていることを明確に示しています。

ホテル業界全体が向かう「ウェルネスシフト」

ラスベガスの例が示すように、ホテル業界は今、単なる宿泊施設から「心身の健康と幸福を追求する場」へと進化を遂げようとしています。これは、高級ホテルに限らず、あらゆるランクのホテルにおいて、今後の差別化と競争力強化の鍵となるでしょう。

このような時代の変化を敏感に捉え、新たな価値創造に挑む日本のブランド、それは僕が創業したウェルネスブランド【Shikohin】です。

僕らは今、日本の豊かな自然と伝統を背景に、ウェルネスとホスピタリティを融合させた、革新的な事業を展開しようとしています。

次回の「後編」では、このウェルネスブランドShikohinが、どのようにして世界最高峰のヨガブランドと手を取り合い、ホテル業界の未来を切り開こうとしているのか、その詳細に迫ります。どうぞお楽しみに!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

目次