現在、アメリカへのインバウンド観光に、急ブレーキがかかっています。調査会社は2025年のインバウンド観光需要を、当初の「前年比+8.8%」から「−5.1%」へと大幅に下方修正しました。
しかし、問題は単なる「訪問者数の減少」だけではありません。旅行者の「お金の使い方」や「旅の楽しみ方」が、これまでとは様変わりしているのです。
このあと、現場のリアルな声とデータを基に、アメリカ観光業界が直面する危機の実態に迫ります。

現場で感じる景気悪化のリアルな声
「去年の11月頃から、売上が前年比で20%も落ち込んでいる」
─ロサンゼルスのレストラン経営者の多くは、そう嘆きます。インフレで物価が高騰し、「こんなに高いなら家で食べよう」と考える人が急増。
この傾向は、観光地でより顕著です。マイアミでは、普段なら予約でいっぱいの超人気レストランに空席が目立ち、高級な「Uber Black」の利用者が激減しているといいます。
人々は明らかに財布の紐を固くしており、その影響は外食や交通といった観光消費にボディブローのように効き始めています。
好調なのは、マクドナルドやウォルマートといった「リセッション(不況)に強い」とされる低価格帯の業態ばかり。消費の二極化が、かつてないスピードで進んでいるのです。

数字は正直!旅行者の「本音」が透ける5つの変化
インバウンド観光客の行動には、単なる節約志向だけではない、もっと本質的な変化が見られます。
・平均滞在日数の短縮(5.6日→4.3日)
滞在が短くなることで、一人当たりの消費額の減少。
【レストラン予約キャンセル率の上昇】
特に高級店でのキャンセルが増え、飲食店の経営を圧迫。
【ライドシェア密度の低下】
観光エリアでのUber利用が減少し、都市交通やドライバーの収益に影響。
【渡航関連検索の減少】
Googleでの“Visit USA”といった検索が減っており、渡航先としてのアメリカの魅力低下が表出。
【SNS投稿数の減少】
「#VisitLA」のようなハッシュタグ投稿が減っているのは、「シェアしたい」と思える体験価値が低下している現れ。
上記のようなデータは、旅行者がアメリカでの滞在そのものに対する期待感を失いつつあるという、深刻な問題を浮き彫りにしているのです。
観光依存都市が直面する危機と未来への展望
この需要後退は、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスといった観光依存度の高い都市に深刻な影響を与えています。
特にサンフランシスコでは、レストラン売上がパンデミック前から20%も減少し、商業不動産ローンの遅延率が全米平均の約7倍に達するなど、危機的な状況です。
アメリカ観光業界は今、「お客さんが来ない」という量的な問題と、「来てもお金を使ってくれない、楽しんでくれない」という質的な問題のダブルパンチを受けているのです。
この厳しい状況は、今後数ヶ月でさらに明確な数字として現れてくるでしょう。観光業界がこの難局をどう乗り越えていくのか、その動向を引き続き注視していく必要があります。

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