この度、大変光栄なことに、一般社団法人 日本雑誌広告協会(JMAA)様が発行する会報誌にて、私の論考「広告と信頼をめぐるメディア環境の未来」を掲載いただきました。
JMAAは、日本の雑誌広告の価値向上と発展を目指す、歴史ある業界団体です。そのような権威ある媒体で発信する機会をいただき、心より感謝申し上げます。
今回は、元記事のエッセンスを凝縮し、特に「海外でビジネスを展開したい」と考える方に向けて、これからの時代に必須となる新しい広告戦略について解説します。
これからの広告は「どこに出すか」が企業の価値観を示す
現代の広告戦略で最も重要なのは、「広告を”どこに”出稿するか」が、企業のブランド価値や社会的なスタンスを雄弁に物語る、という事実です。
かつてのように、単に製品の魅力を伝えるだけではもはや不十分。特に社会の「分断」が顕著なアメリカのような市場では、広告を掲載するメディアの選択そのものが、企業の経営判断として厳しく評価される時代になっています。

なぜ広告戦略の転換が求められるのか?
では、なぜこれほどまでに「出稿先の選択」が重要になったのでしょうか。理由は大きく2つあります。
1.政治が生んだメディアの「分断」
過去30年間で、アメリカの政治的分断は深刻化し、メディア環境を二極化させました。
特定のメディアは特定の政治思想を支持する層にしか届かなくなり、逆に言えば、あるメディアに広告を出すことは、その思想を支持していると見なされかねない状況が生まれました。
2.SNSが加速させる「信頼」の可視化
SNSの普及により、消費者は企業の発言や行動を瞬時に共有・評価します。
特にフェイクニュースが真実よりも早く拡散する現在、広告主が社会的に問題視されるメディアに広告を出稿すれば、その事実はすぐに拡散され、不買運動にまで発展するリスクをはらんでいます。もはや「知らなかった」では済まされません。
米国事例から学ぶ、広告がもたらすリスクとチャンス
こうした環境変化は、企業にとってリスクであると同時に、自社の価値観を明確に示すチャンスにもなります。
例えば、あるフィットネス企業は、トランプ大統領の支持者であるオーナーへの批判が高まった際、あえて自社の信条(多様性や包括性)を強く打ち出すキャンペーンを展開し、ブランドイメージを再構築しました。
これは、広告が単なる宣伝ではなく、「私たちの会社は、こういう価値観を大切にしています」という力強いメッセージになるという好例です。
海外を目指すあなたが今すべきこと
海外、特にアメリカ市場で成功を目指すなら、自社の広告戦略を根本から見直す必要があります。これからあなたが考えるべきは、以下の3つの観点です。
発信内容の一貫性
経営者の信念と一貫した価値観の発信が信頼獲得の鍵となります。「何を伝えるか」をしっかりと設計し、企業の核となる価値観を全コミュニケーションに反映し、トレンドに振り回されない長期的視点で顧客との信頼関係を築く必要があります。
広告出稿=企業姿勢としての認識
企業は出稿先メディアの立ち位置を事前精査し、自社の価値観との整合性を確認する必要があります。出稿基準は単なるリーチ数から「価値観の共有」「社会的責任」へとシフトしていきます。
中立性の再定義
日本では従来「政治的に中立、沈黙=安全」という前提がありましたが、この「無難」という立場自体が成立し難くなっています。「何も言わない」ことが「無関心」と解釈される状況が生まれ、企業としては社会的なリスクになりかねません。
広告とは、社会とのコミュニケーションです。どのメディアで、誰に、何を語るのか。その選択一つひとつが、あなたの会社の未来を創っていきます。
ぜひこの機会に、自社の広告戦略が「未来の価値」に繋がっているか、再点検してみてください。

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