美大生のスキルが最先端AI企業で『最強の武器』になる理由

先日、ニューヨークの最先端AI企業でインターンを終えた娘から、驚くべき話を聞きました。

アートを学ぶ彼女が、BtoBの業務効率化という、一見すると全く畑違いのフィールドで、自身のスキルを存分に発揮して活躍していたのです。

この事実は、これからのAI時代において、専門技術と同じくらい、あるいはそれ以上に「伝える力」、特にビジュアルコミュニケーション能力が重要になることを示しています。

アートとテクノロジーの意外な融合こそが、これからのビジネスの鍵を握っているのです。

目次

相手に伝わらければ価値がない

なぜ、アートスキルがAI企業でこれほどまでに価値を持つのでしょうか?その理由は、どんなに優れた技術やソリューションも、その価値が相手に「伝わらなければ」意味がないからです。

特に、BtoBのAIソリューションのように複雑で無形なサービスは、言葉や資料だけでその魅力を伝えるのが非常に難しい。

そこで、専門的な内容を直感的で分かりやすい「映像」や「デザイン」に落とし込むクリエイティブなスキルが、顧客の心を動かし、ビジネスを加速させるための強力な武器となるのです。

「AI秘書」を売る会社で、なぜ美大生が?

娘がインターンをしたのは、企業のあらゆる業務を自動化・効率化する「AIエージェント」を開発する企業です。

例えば、AIが自動でメールを返信したり、顧客の記念日をリマインドしたり、まるで超有能な秘書のように働いてくれる、そんなソリューションを提供しています。

非常に高度な技術ですが、その分、顧客に「で、結局何がすごいの?」と思われがちです。ここに娘の出番がありました。

複雑なソリューションを『映像化』する役割

彼女のチームの役割は、営業担当が顧客からヒアリングした課題と、それに対する自社のAIソリューションを、一本の短い「映像」にして提案することでした。

退屈なパワーポイントの代わりに、顧客が抱える課題がAIによってどう解決されるのかを、ストーリー仕立ての映像で見せる。これにより、顧客はソリューションの価値を瞬時に、そして深く理解することができます。

まさに、彼女が大学で学んできた映像制作やデザインの力が、最先端テクノロジーと顧客とを繋ぐ「翻訳機」として機能していたのです。

これからの時代に求められる本当のスキルセット

この話を聞いて、僕は時代の大きな変化を実感しました。

これからの社会で求められるのは、単一の専門スキルだけではありません。娘のように、アートの感性とテクノロジーへの理解を掛け合わせ、複雑な物事をシンプルに伝える力を持つ人材が、あらゆる業界で重宝されるようになるでしょう。

彼女が最終的にどんな道に進むかは分かりませんが、この夏、最先端の現場で得た「伝える力」の重要性という経験は、間違いなく彼女の一生の財産になるはずです。

AIが多くの定型業務を代替する未来において、私たち人間に残されるのは、より創造的で、より人間的な領域です。複雑化する世界の中で、物事の本質を捉え、それを魅力的な物語やビジュアルとして表現する力。

それは、一部のアーティストだけのものではなく、これからの時代を生きるすべての人にとって不可欠なスキルセットになっていくでしょう。あなたの持つクリエイティビティも、思いもよらない場所で世界を変える力になるかもしれません。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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