学力だけじゃない!僕が息子を託した学校が「里子」を受け入れる理由[子育て論シリーズその3]

前回、僕が息子のために選んだのが「サミュエリ・アカデミー」というチャータースクールだった、というお話の続きです。

なぜエリート校ではなく、この学校を選んだのか。その最大の理由は、学校の設立理念と、そこに集まる子供たちの「多様性」にありました。初めて学校を訪れた日、廊下ですれ違う生徒たちの表情に、偏差値や成績表では測れない何か——自信と優しさが混ざり合ったような輝きを感じたことを覚えています。

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大富豪が作った「社会貢献のため」の学校

サミュエリ・アカデミーは、半導体メーカー・ブロードコムの創業者であるヘンリー・サミュエリ氏と、その奥様が私財を投じて設立した学校です。彼は会社を売却して得た莫大な資産を元に、利益のためではなく、純粋に社会貢献を目的としてこの学校を立ち上げました。

このような背景を持つ学校は、アメリカでも非常に珍しい存在です。多くの富豪が慈善活動を行う中で、サミュエリ氏は「教育こそが社会を変える最も確実な投資」と信じ、この学校に情熱を注いでいます。彼の活動は「フィランソロピスト(慈善活動家)」として、広く尊敬されています。

多様性こそが子供を育てる

この学校の最もユニークな点は、生徒の5%が「フォスターケアチルドレン」、つまり里子であるということです。親元で暮らせない子供たちを積極的に受け入れ、彼らが安心して学べるように、なんと寮まで用意されています。

この5%という数字は、決して小さくありません。30人のクラスなら1〜2人、学年全体では十数人の里子が在籍していることになります。彼らは特別扱いされることなく、他の生徒たちと同じ教室で学び、同じ食堂で食事をし、同じ夢を語り合います。

裕福な家庭の子もいれば、複雑な背景を持つ子もいる。そんな多様な環境の中で、子供たちは教科書からだけでは学べない、他者への思いやりや社会の現実を肌で感じながら成長していきます。

僕は、この環境こそが息子にとって最高の学びの場になると確信しました。人生において本当に大切なのは、テストの点数ではなく、どれだけ多様な人々と共に生きる力を身につけられるかではないでしょうか。

未来のリーダーを育む場所

サミュエリ・アカデミーは、ただ優しいだけの学校ではありません。創設者自身が一代で大企業を築き上げた起業家(アントレプレナー)であることから、生徒たちにも「アントレプレナーシップ(起業家精神)」を教え、未来を切り拓く力を育むことを重視しています。

実際、学校では中学生の段階から、ビジネスプランの作成やプレゼンテーション、チームでのプロジェクト運営など、実社会で必要とされるスキルを実践的に学ぶ機会が豊富に用意されています。

社会的な弱者に手を差し伸べる優しさと、自らの力で道を切り拓く強さ。その両方を学べる場所に、僕は大きな価値を感じたのです。 次回は、サミュエリ・アカデミーのもう一つの魅力である、超実践的な「教育の中身」について、さらに深く掘り下げていきたいと思います。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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