子どもに「スマホやめなさい」と言う僕が、一番のスマホ依存症だった話[子育て論シリーズその5・最終回]

これまで4回にわたり、子どものスクリーンタイム問題から始まり、僕が選んだユニークな学校「サミュエリ・アカデミー」の魅力についてお話ししてきました。

最終回の今回は、この一連の経験を通して気づいた、僕自身の大きな問題について、正直に告白したいと思います。書きながら、恥ずかしさと情けなさが湧いてくるのを感じますが、同じ悩みを抱える親御さんたちのために、ありのままをお伝えします。

目次

僕も「即時満足」の奴隷だった

子どもたちには、スマホから離れて物事の本質を学んでほしい。努力の末に喜びを得る「遅延満足(Delayed Gratification)」の大切さを知ってほしい。そう願い、学校まで変えた僕ですが、ふと気づくと、自分自身が最も「即時満足(Instant Gratification)」の奴隷になっていました。

寝る直前までスマホをいじり、朝起きて真っ先にニュースをチェック。食事中ですらテーブルの横にスマホを置き、子どものスポーツ観戦の合間にも仕事のメールを確認してしまう…。息子が試合で活躍した瞬間を、スマホの画面越しに見逃していたこともありました。

これでは、子どもに何を言っても説得力がありません。まさに「偽善者」です。ある日、息子から「お父さんもずっとスマホ見てるじゃん」と言われた時、返す言葉がありませんでした。

頭ではわかっているのに、やめられない

なぜ、こんなことになってしまうのか。それは、スマートフォンが私たちの脳の「報酬系」を巧みに刺激し、ドーパミンを放出させるからです。

通知が来るたびに、新しい情報に触れるたびに、脳は快感を覚えます。その結果、頭では「良くない」とわかっていても、無意識にスマホに手を伸ばしてしまうのです。まるで、ポケットの中に小さな依存物質が入っているような状態です。これはもう、現代病と言っても過言ではないでしょう。

実際、スマホ依存の脳への影響は、ギャンブル依存症のそれと似ているという研究結果もあります。僕たちは、自分が思っている以上に、このデバイスに支配されているのかもしれません。

まず、親が変わることから

子どもに変わってほしいと願うなら、まず親である僕自身が変わらなければならない。そう痛感しました。子どもに「スマホばかり見ないで!」と叱る前に、自分の行動を省みる必要があります。

子どもは親の言葉ではなく、親の行動を見て育ちます。どんなに立派なことを言っても、親自身がスマホに支配されている姿を見せていては、何も伝わりません。完璧にはできなくても、少しずつスマホとの距離を置く努力を見せることが大切です。

僕も、まずは「食事中は、家族全員スマホをテーブルに置かない」というルールを、自分にこそ徹底することから始めてみようと思います。さらに、寝室にはスマホを持ち込まない、子どもとの会話中は絶対に画面を見ないなど、小さな約束を一つずつ守っていくつもりです。

サミュエリ・アカデミーが教えてくれた「遅延満足」の価値。それは、子どもだけでなく、親である僕自身にこそ必要な学びでした。

この5回の連載が、皆さんのご家庭でも、子どもと、そして自分自身のスマホとの付き合い方について考える、一つのきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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