突然の『タリフ合戦』勃発?!中小企業を襲うサプライチェーン危機│関税問題Vol.1

海外との取引、特にアメリカ市場を視野に入れている中小企業の経営者の方々にとって、他人事ではないかもしれないお話をします。

目次

米中関税強化の最新動向

現在、アメリカでは、「タリフ(関税)」に関する議論が再燃しています。特に、トランプ氏周辺からは、全世界向けに一律10%の関税。中国に対しては特に厳しい関税率を課すことが示唆されており、今後はまさに「タリフ合戦」の様相を呈することになるのではないでしょうか。

─ 注記 ─

この記事を執筆時点(2025年4月末)における、アメリカの中国に対する関税率推移を見てみましょう。


当初の20%から始まり、34%、84%と段階的に引き上げられてきました。さらに、複数の追加関税(最恵国税率、セクション301条に基づく追加関税、IEEPAによる20%の追加関税など)が重ねて課された結果、直近での関税率は、多くの品目で130~145%程度に達しています。

この状況を受けた中国側では、「最大245%に達する可能性がある」と指摘する向きもあります。ただ、これは複数の関税を合算した「理論上の最大値」なので、すべての品目に一律で適用されるわけではありません。

中小企業が直面する現実

私たちのような中小企業は、こうした国際的な政治・経済の大きなうねりに、否応なく巻き込まれてしまいます。

私が経営しているウェルネスブランドは、その渦中にいます。私たちは、7月に向けて、6種類もの新商品をアメリカ市場でローンチする計画を進めています。

ウェルネス関連商品、特にスキンケア商品を取り扱う私達にとって、商品の魅力を最大限に引き出すパッケージングは生命線。デザインはもちろん、形状や素材の種類にも徹底的にこだわり抜き、年初から最適なサプライヤーを探し続けてきました。

Shikohin

新商品計画に立ちはだかる壁

その結果、品質とコストのバランスから、韓国と中国のサプライヤーに白羽の矢を立て、いよいよ発注という段階までこぎつけていたのです。

しかし、まさにそのタイミングで、前述の「タリフ爆弾」とも言える情報が飛び込んできました。もし、中国製品に対して予告通りに大きな関税が課せられることになれば、コスト的に全く見合わなくなり、中国サプライヤーとの取引は事実上不可能になります。

長期間かけて準備してきた新商品ローンチ計画が、突如として根底から揺らぎ始めた瞬間でした。これは決して私たちだけの問題ではありません。多くの中小企業が、今まさに同じような苦境に立たされている可能性があるのです。

次回はタリフ合戦の連鎖について

次回の記事では、この「タリフ合戦」が引き起こす、さらなる問題の連鎖について掘り下げていきます。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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