【第3回】投資家は要注意!トランプ税制899条があなたの資産を狙う?金融市場が震撼する理由

第1回、第2回の記事では、トランプ税制899条がグローバル企業に与える直接的な打撃について解説してきました。法人税の上乗せやBEAT課税の強化は、多くの企業の経営戦略を揺るがす深刻な問題です。

しかし、この法案が持つもう一つの側面、すなわち「金融市場と投資家への影響」は、さらに広範囲で即時的な混乱を引き起こす可能性があります。

今回は、音声データで専門家が「ウォール・ストリートが最も注目している」と語った、報復課税の2つ目の柱を中心に解説します。

目次

ウォール・ストリートが最も恐れるもの

899条がもたらす衝撃の2つ目の柱。それは、外国の法人や居住者が米国から受け取る配当や利子などの所得に対する追加課税です。

具体的には、この源泉税率を毎年5%ずつ段階的に引き上げていくという内容です。米国株や米国債に投資している海外の投資家にとって、大きなダメージになるでしょう。

さらなる衝撃は、現在は非課税となっている政府系ファンドが保有する米国ポートフォリオ資産も課税対象となる点です。これは、国家レベルの巨大な資金の流れにも影響を及ぼす可能性があり、金融市場の不確実性を一気に高める要因となっています。

なぜ金融業界はパニックになっているのか?

この動きに対し、世界の金融業界は強い危機感を抱いています。国際銀行協会(IIB)は「金融市場の混乱を引き起こすリスクがある」と警告。英HSBCや仏BNPパリバなど、世界の大手金融機関が加盟するIIBは、法案の修正を求めて活発なロビー活動を開始しました。

彼らがこれほどまでに焦るのには理由があります。外国銀行は米国経済において、極めて重要な役割を担っているからです。

  • 米国内で外国企業が発行する社債の70%以上を引き受け
  • 2023年には1兆3000億ドル(約188兆円)以上を米国企業に融資
  • 多国籍企業の米国への直接投資を支援し、2700億ドルの売上を創出

上記のように、外国銀行は米国経済の血流を支える存在です。899条によって彼らの投資活動が滞れば、その影響は米国の実体経済に即座に波及し、資本の流出という最悪のシナリオも現実味を帯びてきます。

個人投資家にも影響があるかも!?

この法案は、もはや専門家や機関投資家だけの問題ではありません。米国株や米国関連の投資信託を保有している個人投資家にとっても、配当利回りの低下や市場全体の不安定化という形で、直接的な影響が及ぶ可能性があります。

これまで見てきたように、899条は企業活動から個人の資産形成まで、あらゆる側面に深刻な影響を及ぼす「劇薬」です。

では、これほどまでに過激な法案は、本当に実現してしまうのでしょうか?最終回では、法案を巡る政治的な背景と、今後のシナリオについて考察します。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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