トランプ新政権の経済戦略核心!BBB法案で再燃する「アメリカファースト」の全貌

先日来の記事で、トランプ大統領が提唱する「899条」について深掘りしました。

今回の記事では、件の「899条」をも内包する、トランプ大統領の次期政権における最重要法案「The One, Big Beautiful Bill(ザ・ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル)」、通称「BBB」を掘り下げてみましょう。

目次

トランプ大統領の次なる一手「BBB」法案とは?

この「BBB」法案は、文字通り「大きな、美しい法案」という意味を持ちますが、その内容はまさに圧巻のひとこと。

トランプ大統領が目指す「アメリカファースト」政策の再構築と経済成長の核となるべく、バイデン政権の政策を根本から覆し、国内投資を呼び込み、米国の競争力を高めることを目的としています。もしこの法案が成立すれば、その影響は米国だけでなく、日本を含む世界全体に波及することは間違いありません。

「BBB」法案は、トランプ政権2期目における経済・政治戦略のまさに中心に据えられています。その目的は明確で、米国の競争力を高め、国内への投資を促進し、外国への依存度を低減すること。そして何より、バイデン政権が推し進めてきた政策を根こそぎ巻き戻すことです。

すでに過去記事で触れた「899条」(外国子会社への報復課税)も、この「BBB」法案の重要な構成要素の一つに過ぎません。

それほどまでにこの法案は包括的かつ野心的な内容を含んでいるのです。トランプ大統領自身が「大きな美しい法案」と呼ぶことからも、彼がこの法案にどれほどの思い入れがあるかが伺えます。

なぜ今この法案?トランプ大統領の真の狙い

なぜ今、この大規模な法案が焦点となっているのでしょうか。そこには、トランプ大統領の明確な戦略と、アメリカ中間選挙への布石が隠されています。

まず、2017年に彼が実現した大型減税の恒久化です。この減税策は2025年末に期限切れとなるため、これを恒久的な税制改革として成立させることは、彼の支持基盤への大きなアピールとなります。

次に、バイデン政権の政策、特に「インフレ抑制法(IRA)」や社会保障支出の拡大といった民主党主導の政策を根本から見直し、否定するという強いメッセージです。彼はこれらの政策が米国経済に悪影響を与えていると考えており、自身の法案でそれらを「ぶっ潰す」ことを目指しています。

この法案はまさに、2025年後半に控える中間選挙への布石と考えていいでしょう。議会や国民に対し、トランプ大統領の「強いリーダーシップ」と「目に見える成果」を示す象徴的な立法となることで、共和党の基盤をより強固にしたいという狙いがあります。

これらを通じて、減税、国防強化、保護主義的な政策を「繁栄」と位置づける「経済ナショナリズム」を再定義しようとしているのです。

可決は既定路線か?戦略的な「予算関連法案」としての扱い

この巨大法案の可決時期は、上院で2025年7月4日までを目指しており、8月の議会休会前の重要な節目とされています。注目すべきは、下院ではすでに2025年5月22日に可決済みという点です。

通常、米国上院で法案を可決するには、フィリバスター(議事妨害)を回避するために60票の賛成が必要です。しかし、共和党は上院で53議席しか持たないため、民主党からの協力なしでは通常、法案成立は困難です。

そこでトランプ大統領が採る戦略が、「BBB」法案を通常の法案ではなく、「予算関連法案」として扱うというもの。この「予算調整手続き(Budget Reconciliation)」を適用すれば、単純過半数である51票で可決が可能になるのです。

現在の米国議会では、上下両院ともに共和党が過半数を握っています。この状況下で、トランプ大統領が党内の支持者をまとめ「可決しろ」と指示すれば、この法案がそのまま成立してしまう可能性は十分にあります。

この戦略的かつ巧妙な手口は、トランプ大統領がいかにして公約を実現しようとしているかを示すものです。もし「BBB」法案が成立すれば、米国の、そして世界の経済地図は大きく塗り替えられることになるでしょう。

次回の記事では、この法案がもたらす具体的なメリットについて詳しく見ていきます。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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