前回の記事では、多くの事業計画が失敗する原因は「評価者視点」の欠如にある、というお話をしました。今回はその解決策です。どうすれば、「客観的ロジック」に裏打ちされた投資家のような鋭い視点を自分のものにできるのか?
結論は、AIを最強の「壁打ちパートナー」にすることです。
AIに文章を要約させたり、検索させたりするだけでは、そのポテンシャルの1%も使えていません。これからの時代、AIとの「対話の質」こそが、ビジネスの成否を分けるのです。
なぜAIとの壁打ちが有効なのか
友人や同僚に相談すると、どうしても遠慮や人間関係に基づく忖度が生じるもの。しかし、AIは違います。余計な遠慮や忖度なしに、ひたすら論理的な「質問」を投げかけてくれ、あなたの計画の曖昧な点や、論理の飛躍を容赦なく指摘してくれます。
僕が今開発している「TIAIゲーム」は、まさにこのコンセプトを形にしたもの。AIが伴走者となって、ユーザーが事業計画書を作り上げるのをサポートするゲームなのです。
重要なのは、AIが答えを教えるのではなく、良質な「質問」を投げかけること。このAIとの対話、いわば「共創(共に創る)」プロセスを通じて、ユーザーは自然と評価者の視点を内面化し、計画を磨き上げていくことができるのです。

AIの真価は「質問力」にあり
AIの能力を測る指標は、生成される文章の流暢さだけではありません。むしろ、「いかに本質的な問いを立てられるか」という「質問力」にこそ、その真価があります。
例えば、「この市場は魅力的ですか?」という漠然とした問いではなく、
「この市場の今後3年間の年平均成長率(CAGR)の根拠は何ですか?」
「主要競合のマーケットシェアと、彼らが満たせていない顧客ニーズは何ですか?」
といった具体的な質問をAIが投げかけてくれる。こうした鋭い問いに答えていくうちに、自分の思考がいかに浅かったかに気づかされ、リサーチを深め、より強固なロジックを構築せざるを得なくなるのです。
「伴走者AI」が引き出す、あなたの隠れたポテンシャル
一人で事業計画を練っていると、どうしても視野が狭くなりがちです。自分の思い込みや希望的観測に囚われてしまうことも少なくありません。ここで「伴走者」としてのAIが活躍します。AIは、あなたが自分でもまだ気づいていない可能性やリスクを、客観的なデータに基づいて示唆してくれます。
「そのビジネスモデルだと、顧客獲得単価(CPA)が高騰するリスクはありませんか?」
「この技術シーズは、別の市場に応用できる可能性も考えられます」
といった具合に。AIとの対話は、自分一人ではたどり着けなかった新しい視点を与え、担当者自身が秘めていた可能性を最大限に引き出してくれるのです。

ゲームで学ぶ「評価される」事業計画の作り方
知識として「評価者視点が大事だ」と学ぶのと、それを実践できるのとでは大きな違いがあります。「TIAIゲーム」が目指すのは、このギャップを埋めることです。
ゲームの中で、AIからの質問に答え、事業計画をブラッシュアップしていく。そして最終的に、その計画をAI自身が「投資家目線」で評価する。このサイクルを繰り返すことで、ユーザーは座学では決して得られない、生きたスキルを体得できます。
失敗を恐れずに何度でも挑戦できるシミュレーション環境だからこそ、本番のプレゼンで通用する、本当に「評価される」計画を練り上げる力が身につくのです。
AIは思考を深める最強のパートナー
AIは、もはや単なるアシスタントではありません。あなたの思考を深め、事業を成功に導くための強力な「パートナー」です。その鍵は、AIの「質問力」を最大限に活用した壁打ちにあります。
さて、肝心の評価者たちは「具体的に、何を、どのような基準で」評価しているのでしょうか? 最終回となる次回の記事では、僕が15年以上の経験で見てきた、資金調達の成否を分ける「5つの黄金律」とも言える評価軸について、余すところなく徹底解説します。


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