CES 2025に参加して見えた日米企業の動向と展望(後半)

前回の記事では、CES 2025における日米企業のソフトウェア・ハードウェア戦略や、自動車産業の変化を中心に考察しました。

今回はその続きとして、デジタルヘルス分野や今後の日米協力のあり方について掘り下げます。

目次

デジタルヘルスにおける日米協力の可能性

Venetian Expoでは、デジタルヘルス関連の展示が中心でした。特に注目されたのは、唾液や尿などから血糖値を非侵襲的に測定する技術です。

日本は、超高齢社会への対応という課題において世界に先行しており、そこで培われた健康管理技術や知見は、グローバルなデジタルヘルス市場でリーダーシップを発揮できる可能性を秘めています。

この分野での日米協力は、双方に大きなメリットをもたらすでしょう。

フライホイール効果から見る日米関係

シリコンバレー発のビジネス戦略に「フライホイール」という考え方があります。

これは、企業の成長を持続的かつ効率的に促進する循環型のビジネスモデルです。一つの施策(例:優れた顧客体験の提供)が次の施策(例:口コミによる新規顧客獲得)を後押しし、それがさらに次の施策(例:売上増加によるサービス改善)につながる、というように、好循環を生み出すことでビジネス全体が勢いを持って回り続けるイメージです。

このフライホイールの考え方は、日米のビジネス関係にも応用できます。技術交流、人材交流、資本提携といった個別の要素が相互に作用し、好循環を生み出すことで、両国の経済関係全体をより強固にしていくモデルが考えられます。

ソーシャルメディア戦略とブランディングの潮流

現代のビジネスにおけるブランディング戦略として、「SNS活用」の重要性は誰もが知るところです。

今、特に重視されているのが「ストーリーテリング」です。単なる製品やサービスの機能紹介を超え、その背景にある理念や開発秘話といった「物語」を効果的に伝えることが、共感を呼び、強いブランドを構築する上で不可欠な要素となっています。

従来、アメリカでは個人(インフルエンサーなど)をフォローする傾向が強く、日本では企業やブランドといった「組織」を重視する傾向が見られました。

しかし近年は日本でもインフルエンサーマーケティングが浸透するなど、両国のマーケティング手法は相互に影響を受けながら変化しています。

日米協力による未来への期待

クノロジーの進化が加速する現代において、日本とアメリカは互いの強みを活かした協力関係を深めていく必要があります。

アメリカの強みであるソフトウェア技術や革新的なビジネスモデル、マーケティング戦略。日本の強みである高品質なハードウェア技術や品質管理、長期的な視点、きめ細やかなサービス精神。これらを効果的に融合させることで、単独では成し得ない、より大きな価値を共創できるはずです。

CES 2025で目の当たりにしたように、テクノロジーの世界は国境を越えたグローバルな競争と協力の舞台です。この舞台で成功を収めるためには、日米両国の企業が互いの強みを深く理解し、戦略的なパートナーシップを築いていくことが、今後ますます重要になるでしょう。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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