「ワニの監獄」にとうとう日本人も…ICEの恐怖はすでに対岸の火事ではない

前回の記事では、トランプ政権下で急速にその力を拡大する組織「ICE」の概要についてお話ししました。

今回はさらに一歩踏み込んで、その活動の驚くべき実態と、それが僕たち日本人にとっていかに他人事ではないか、という現実をお伝えしたいと思います。

目次

「ワニの監獄」に「処刑場」?ふざけた名前の裏にあるICEの恐怖

ICEは現在、アメリカ各地に新たな拘束施設を次々と建設しています。問題なのは、その施設のニックネームです。

例えば、フロリダ州に作られた施設は「アリゲーター・アルカトラズ(Alligator Alcatraz)」。「アルカトラズ」とは、かつてサンフランシスコ湾に浮かび、脱出不可能と言われた伝説の刑務所の名前です。

なぜ「アリゲーター(ワニ)」なのか?なんと、この施設の周りには文字通りワニがたくさんいて、脱走者を阻むとからだとか。(怖っ!)

他にも、インディアナ州にはレース場の近くにあることから「スピードウェイ・スラマー(Speedway Slammer)」という施設があります。「Slammer」は監獄を意味するスラングですが、処刑場のような響きすら感じさせます。

まるで悪ふざけのようなネーミングですが、その裏には、拘束される人々への非人道的な姿勢が透けて見え、背筋が凍る思いです。

Tシャツまで販売?冗談では済まされないICEのプロパガンダ戦略

さらに信じがたいのは、この「アリゲーター・アルカトラズ」の名前をプリントしたTシャツやグッズが実際に販売されているということ。ワニと監獄をモチーフにしたデザインは、まるでB級ホラー映画のグッズのようです。

深刻な人権問題を、まるでパーティーグッズのように消費し、面白がる。この動きは、ICEの活動を正当化し、国民の感覚を麻痺させるための巧妙なプロパガンダ戦略ではないかとも思います。 笑いの中に恐怖を混ぜ込むことで、本当に起きていることの深刻さから人々の目を逸らさせているのではないでしょうか。

北米での工場新設に取り組む韓国人や日本人にも及んだICEの摘発劇

「いくら何でも、さすがに自分には関係ないだろう」。そう思っていた僕の考えは、あるニュースによって打ち砕かれました。

2025年9月4日、ICEはジョージア州にある現代自動車とLGのバッテリー工場に大規模な査察に入り、約475人を一斉に逮捕したのです。

逮捕されたのは、工場の新設のために韓国から派遣されていた技術指導員たちでした。適切なビザを持っていなかったことが理由とされていますが、その中に3人の日本人も含まれていました。

彼らは犯罪者でもギャングでもありません。アメリカの経済に貢献するため、真面目に仕事をしに来ていた人々です。そんな彼らが、ある日突然、武装した捜査官に囲まれ、犯罪者のように連行されていく。

一度「不法入国者」として扱われれば、10年間はアメリカに入国できなくなります。これはもはや、遠い国の話ではありません。僕やあなたの身に、いつ降りかかってもおかしくない現実なのです。

これは対岸の火事ではない!僕たちが知っておくべき現実

韓国政府はこの件に猛抗議し、今回は例外的な措置が取られたようですが、この事件が示した意味は非常に大きいと言えるでしょう。ICEの刃は、もはや不法移民だけでなく、合法的に滞在しているはずの外国人にも向けられ始めているのです。

次の最終記事では、このICEの強化がもたらす「監視社会」の恐怖が僕たちの自由や民主主義にどのような影響を与えるのか。さらに深く掘り下げて考察していきたいと思います。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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