前回の記事では、トランプ新政権の主要政策の方向転換と、日本企業にとってのチャンスとリスクについて解説しました。
今記事では、トランプ氏の経済政策に焦点を当ててみましょう。特に税制改革と暗号通貨戦略について分析します。
中小企業や中間層に優しい税制改革
トランプ政権は、OECDグローバル税制合意からの撤退や、IRS(米国内国歳入庁)の活動停止命令など、大胆な税制改革を打ち出しました。これは、中小企業や中間層の負担を軽減し、ビジネス活動を活性化させるのが狙いでしょう。
例えば、IRSの停止命令は、中小企業が煩雑な監査や税制対策に時間を取られず、本業に集中できる環境を整えるのが目的です。また、IRSによる無期限の採用凍結は、税務執行の抑制を示唆し、企業活動への介入を減らす意図が伺えます。
2017年の減税および雇用法(TCJA)の延長も重要なポイントです。法人税を21%から15%に引き下げる提案は、米国内でものづくりを行う企業に限定することで、国内産業の活性化を促進しようとしています。
移民政策と労働市場への影響
トランプ政権は、移民政策においても大胆な転換を図っています。ビザプログラムの見直しや一時的な在留資格の取り消し難民受け入れの一時停止などは、国内労働市場に与える影響が大きいでしょう。
ビザプログラムの見直しは、H-1Bビザを含む就労ビザプログラムの改革を進め、米国人労働者の優先を図る施策です。外国人労働者を雇用する企業に対し、資格要件をより厳格に設定したり、H-1Bビザの申請手数料を引き上げ、企業が外国人労働者を雇用する際のコストを増加させています。
また、2025年3月21日にトランプ政権は、バイデン前政権下で導入された人道的仮釈放プログラムにより入国が許可されたキューバ、ハイチ、ニカラグア、ベネズエラ出身の移民約53万人の一時的な在留資格を取り消すと発表しました。これにより、該当する移民は4月24日までに米国からの出国を求められています。
これらの移民政策は、アメリカの労働市場における人材確保に影響を及ぼすでしょう。そこでわが国としては、労働力不足に対応するための自動化やロボット技術の導入の検討が必須となるでしょう。
暗号通貨戦略と新たな金融市場の開拓
トランプ政権は、暗号通貨市場にも注目し、規制の整備を進めようとしています。
暗号通貨市場に関する大統領作業部会の設立は、暗号通貨市場の健全な発展を促進するのが目的です。トランプ政権は、暗号通貨を単なる投機対象としてではなく、新たな金融市場の突破口だと見ているのでしょう。
暗号通貨技術を活用したビジネスモデル開発や、暗号通貨市場への投資が、今後の優先課題になると見ています。
次回の記事では、環境政策、社会政策、外交政策、連邦政府の法律向上に関する考察をお伝えします。
