全米最大級の食の見本市「Natural Products Expo West 2025」のレポートも、いよいよ最終回です。
前回は、最新トレンドの前半として「高タンパク質」「機能性食品」「腸活」の進化について解説しました。
今回は、その後半として注目された「サステナビリティと食」、そして「パーソナライズ化する栄養」とについて掘り下げます。 最後に、これらのトレンド全体を踏まえ、これからの食の未来、そして日本の食品業界が進むべき道について考察してみたいと思います。
トレンド4─地球との共生を目指す食のサステナビリティ「再生農業」
個人の健康だけでなく、地球全体の健康、すなわちサステナビリティへの関心は、食品業界においてもはや無視できない大きな潮流です。「Natural Products Expo West 2025」でも、その重要性はさらに増しているように感じました。
昨年から続く食品廃棄削減(フリーズドライ技術の活用など)や、エコフレンドリーな包装への取り組みはもちろんのこと、今年特に注目を集めていたのが「再生農業(Regenerative Agriculture)」というキーワードです。
再生農業とは、単に環境負荷を減らすだけでなく、土壌の健康を回復・改善し、生物多様性を高め、炭素を土壌に貯留することを目指す農法のこと。化学肥料や農薬の使用を極力抑え、被覆作物の利用や不耕起栽培などを実践します。
「再生農業で育てられた原料を使用している」ことをアピールする製品が目立ち始めており、これは消費者が「環境再生に貢献する」という、より積極的な価値を食品に求めていることの表れと言えるでしょう。
サステナビリティは、「配慮」から「貢献」へと、その意味合いを深めているのかもしれません。

トレンド5─多様なニーズに応えパーソナライズ化する栄養ソリューション
5つ目のトレンドは、個々のライフスタイルや健康課題に合わせた「パーソナライズ化」の流れです。これも昨年からの継続ですが、より多様なニーズに対応する動きが見られました。
子供の健やかな成長をサポート
女性のライフステージに寄り添う(ウィメンズヘルス)
特定の食事法の実践者をサポート
これからは、「マス(大衆)」だけでなく、「個」のニーズにいかに応えていくか。健康データの活用なども視野に入れながら、より精度の高いパーソナライズ化が今後の鍵となりそうです。
2025年のトレンドから見える食の未来と日本の食品業界が取るべき道
さて、ここまで「Natural Products Expo West 2025」で見られた5つの大きなトレンド、
①高タンパク質
②機能性食品
③腸活
④サステナビリティ/再生農業
⑤パーソナライズ栄養)
を見てきました。
これらのトレンドは、食が単なるエネルギー補給ではなく、自己実現(健康、パフォーマンス向上)、社会貢献(環境保護)、そして個々の価値観を表現する手段へと、その役割を大きく広げていることを示しています。
この大きな変化の波は、必ず日本にも訪れます。いや、すでに訪れ始めているはずです。日本の食品業界は、この潮流をどう捉え、チャンスに変えていくべきなのでしょうか?

明確な「価値提案」
「美味しい」「安全」はもはや当たり前。その上で、「どんな機能があるのか?」「どんな社会課題の解決に貢献するのか?」「誰のどんな悩みに応えるのか?」といった明確な価値(バリュープロポジション)を打ち出すことが不可欠です。
「再生」視点の導入
サステナビリティの議論は、環境負荷低減から一歩進んで「環境再生」へと向かっています。再生農業への関与や、アップサイクルの推進など、より積極的な貢献が求められます。
日本の「食資産」の再構築
世界に誇る発酵技術、うま味文化、多様な機能性素材(海藻、緑茶、伝統野菜など)は、グローバルなトレンドと融合させることで、唯一無二の価値を生み出す可能性を秘めています。特に「腸活」分野でのリーダーシップ発揮に期待したいところです。
パーソナライズ化への対応
個々の健康データや嗜好に合わせた製品やサービスの開発は、今後の大きな成長領域です。テクノロジー(AI、データ分析など)をいかに活用できるかが鍵となります。
ストーリーテリングと透明性
製品の背景にあるストーリー(開発者の想い、生産者のこだわり、環境への貢献など)を伝え、原材料や製造プロセスに関する透明性を高めることが、消費者の信頼と共感を獲得します。
Natural Products Expo West 2025」最後に
3回にわたってお届けした「Natural Products Expo West 2025」のレポートは、これにて終了です。食の世界のダイナミックな変化を感じていただけたでしょうか?
この情報が、皆さんのビジネスや日々の選択のヒントになれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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