さて、今回はちょっと趣向を変えて、良くも悪くも世界中から注目を集める、あのドナルド・トランプ氏について語ってみようと思います。
僕が注目しているのは、と言うか、いやでも目についてしまうのが、彼の異常なまでの「セルフブランディング能力」です。そこには、学ぶべき点もあるけど、反面教師にすべき点もいっぱいあるなあと感じています。
トランプ氏はブランド構築の天才
トランプ氏は、世間的には「ビジネスマンとして大成功」というイメージがあるのではないでしょうか。だけど、実際は違います。
もちろん、不動産王として名を馳せたのは事実です。でも、その裏では何度も破産を経験しているんですよね。普通の神経の経営者なら、とっくに市場から退却していてもおかしくないレベルの痛手を被っているはずです。
じゃあ、なぜ彼はここまで影響力を持ち続けているのか!?
その答えはシンプルです。彼は「自分自身をブランド化する天才」だから。
たとえビジネスでコケても、彼の「ブランド価値」はなぜか下がりません。むしろ、ダメージを逆手に取って、さらに強固なイメージを作り上げて来ました。
自己演出力、自己プロデュース能力に関しては、正直なところ、彼の右に出る者はいないんじゃないでしょうか。
「トランプ」の名を冠する豪華絢爛な世界観

彼のブランディング戦略の基本は、徹底した「イメージ作り」です。彼が手掛けてきた(あるいは名前を冠した)ビル、ホテル、カジノ、ゴルフコース、アパレル……その全てに、デカデカと「TRUMP」の名前が刻まれているのは有名です。
そして、それらが醸し出すイメージは一貫しています。
豪華絢爛
成功者の証
金ピカ(文字通り、内装に金色を多用する)
勝者の象徴
僕も、ラスベガスやニューヨークのトランプホテルに泊まったことがあるのですが、まあ、確かにキラキラの極みという印象でした。ロビーから部屋の隅々まで、「どうだ、すごいだろう!」と高笑いする彼の声が聞こえてきそうな雰囲気だったのを覚えています。
この徹底したイメージ戦略によって、「トランプ=成功、富、豪華」という刷り込みが、多くの人々の潜在意識にまで浸透していったのでしょう。たとえ、その裏で本人がビジネス的に苦境にあえいでいたとしても、そんなことはほとんどの人にはわかりませんからね。
このギャップこそが、彼のブランディングの巧妙さであり、ある種の「危うさ」でもあると僕は感じています。

トランプという名前を存分に利用した驚きのライセンスビジネス
さらに驚くべきは、彼の「名前の貸し方」です。
一般的には、企業がビルの壁面などに自社の名前やロゴを掲示する場合、広告宣伝費としてビルオーナーにお金を支払います。あるいは、ビルにテナントとして入居する際の交渉材料として、ネーミングライツを得たりすることも少なくありません。
ところが、トランプ氏の場合は違うんですよ。「俺の名前を使いたいなら、ライセンス料を払いな」というスタンス。つまり、ビルオーナー側が、トランプ氏にお金を払って「TRUMP」の名前をビルに冠する、なんてケースがほとんどなのだとか。もう、ビックリでしょう!?
「あたりまえだろう!だって、トランプの名前を付ければ、ビルの価値が上がるのは必至なんだから」というのがトランプ氏の言い分。こういうところが、彼の強烈な自負と、それを実際にビジネスにしてしまう交渉力の象徴だと思うわけです。
本音を言えば、「思い上がりもここまで行くとスゴイなあ」と、呆れるばかり。だけど、ブランディングという観点から見れば、これ以上ない成功例とも言えます。自分の名前そのものが、強力な「資産」になってるなんて、そうそうないことだから。
この続きは後編で
トランプ氏がビジネスマンとしての実績以上に、「イメージ」と「自己演出」で今の地位を築き上げてきた稀有な存在だということは、何となくわかっていただけたのではないでしょうか。
続く後半の記事では、彼が「アメリカ大統領」という究極のブランドを手に入れた後、さらにどんなぶっ飛んだブランディング戦略を展開しているのか。突っ込んで語っていこうと思いますので、どうぞお楽しみに。
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