今年の夏は、世界中がワールドカップで沸きました。48の国と地域が北中米に集まって、国と国とがぶつかり合う。これほどグローバルな祭典も、そうそうありません。
そんなワールドカップの熱狂を間近に感じながら、僕はふと自分の会社のことを考えていました。僕が経営するウェルネスブランド「Shikohin」も、メンバーの顔ぶれだけなら、W杯に負けないくらいグローバルだなと。
ワールドカップと、うちのチームの共通点
Shikohinのチームは、全員が別々の場所にいます。
僕はロサンゼルスで、ブランド全体の戦略とビジョンを定め、文化を育てるのが役目です。日々の運営は、同じLAのオフィスにいる女性メンバーが担っています。細かいところによく気がつく、信頼できる人です。
デジタルマーケティングの戦略を一緒に練ってくれる人は、サンフランシスコ。美容業界で長く働いた後、Googleで4〜5年マネージャーを務め、デジタルマーケティング全般を見てきた人です。
コンテンツ制作とプロモーションを担当するメンバーはアルゼンチンに、バックオフィスを支えるメンバーはフィリピンにいます。
僕自身は50代ですが、チームの中心は20代から30代です。そして全員が、ブランドの価値を信じて働いてくれています。
デザイナーはマダガスカル沖の島にいる

いちばん驚くのはデザイナーです。
長くパリにいた人なのですが、いまはレユニオンという島にいます。マダガスカルの東、およそ700キロの海に浮かぶ、フランスの海外県です。
レユニオンとの物流は、かなりのボトルネックです。たとえば僕が帰国した際、日本から彼女に商品サンプルを送ろうとしても、宅配便では二か月近くかかると言われます。そもそも送れないという返事が返ってくることがほとんどです。
それでも、彼女がそこに住みたいと言うのなら、僕はその選択をリスペクトします。どこで生きるかを決める権利は、その人のものだからです。
木曜朝8時だけは、全員が集まる

ただし、自由には前提があります。
ブランドの価値をきちんと理解し、任されたゴールとタスクを必ずやり遂げてくれるなら、住みたい場所に住んでいいという自由を僕は認めていいます。
そのうえで、全員に課している約束が一つあります。毎週木曜日の朝8時、全員参加の会議に集まることです。
世界に分散するチームがまとまりを保てているのは、「木曜朝8時だけは全員で集まる」という決まり事があり、みんなでそれを厳守しているからだと思います。
すべてを自由にしてしまうと、チームはただの個人事業主の集まりに過ぎなくなります。逆に管理を強めれば、わざわざ世界に散らばっている意味がありません。むずかしいのは、その匙加減です。
自由と規律のどちらかを選ぶのではなく、「ここだけは全員」という一点を決める。それさえあれば、あとはかなり緩めても、組織としてのまとまりは保てます。ブランドを立ち上げてからの数年で、僕が実感したことです。
違う土地にいるから、違う知見が出てくる
いまのところ、うちのチームのスタイルはとてもうまく機能しています。世界各地にメンバーがいる最大のメリットは、視点のバリエーションが増えることです。
住んでいる場所が違えば、見えているビジネス市場の景色も違います。アルゼンチンから見るアメリカ市場、フィリピンから見るアメリカ市場、そしてパリを経てレユニオンに移ったデザイナーが見る市場。それぞれの見え方は、まるで違います。
会議のたびに、僕ひとりでは絶対にたどり着けない角度の意見が出てくるのに毎回驚かされます。
グローバルなチームとは、国籍が多様というだけの意味ではないのだと思います。異なる土地で暮らす人たちが、同じ価値を信じて働くチームという定義でいいのではないでしょうか。
ワールドカップ2026は、スペインの優勝で幕を閉じました。でも僕ら「Shikohin」チームの試合には、終わりがありません。次の木曜日も、朝8時に、世界のあちこちから同じ画面に集まります。

