僕が経営するウェルネスブランド「Shikohin」が信じている価値は、突き詰めるとひとつです。
日本の森、山、畑、海から採れる天然素材を土台に、科学的な裏づけのある素材や技術を組み合わせ、独自の商品をつくる。そして日本で昔から使われてきた道具と組み合わせて、アメリカの人たちに届ける。やっているのは、それだけです。
翻訳するだけでは、何も売れない
なぜ、僕らShikohinには、日本の自然や精神文化を商品にして届けることができるのか。日本の精神文化や考え方の真髄をきちんと理解した上で、それをアメリカの人たちに分かりやすく翻訳できるからだと思っています。
ただし、文化を分かりやすい言葉に置き換えるだけでは、事業になりません。その価値を、商品というかたちに変える力が要ります。
そして商品化は、自分たちだけでは絶対にできない仕事です。研究開発に長けた専門家、商品に合う製造委託先や物流会社、業界に太いコネクションを持つコンサルタント。必要なパートナーを一つずつ探し、タッグを組んできました。相手を見つけ、実際に組める関係になるまでに何年もかかりました。
コンセプトを語ること自体は、正直そんなに難しくありません。僕はコンサルタントが長かったので、資料をつくるのは得意なほうです。でも、資料をつくったからすごいわけではない。実行しなければ、何の意味もありません。
材と空と道、三つの入り口

Shikohinのコンセプトは、日本の自然と精神文化から生まれる「浄めのリチュアル」です。それを僕は「材・空・道」という三つの観点で考えています。
材は、自然の恵み。海と森に囲まれた日本で育まれた植物や、海と大地がもたらすミネラルのことです。
空は、空間。日本各地にある寺社仏閣のような、心身を静かに清めて整えるための場所を指します。伊勢神宮に行くと、結界のような空気にすっぽり包まれる感覚がありますが、あの感じです。
道は、日々の鍛錬。茶道、柔道、日本人が何かを「道」にまで高めてしまう、あの性質のことです。
さまざまな文化に触れ、感性を磨いてきた人ほど、機能だけでつくる表面的な美ではなく、内側から立ち上がってくる美に憧れる。僕らは、内側から立ち上がる美を磨くための考え方と道具を、世界に届けるブランドです。
僕らの宗教は、ハッピーネスです
ダライ・ラマの言葉として知られる「My religion is kindness(私の宗教は優しさです)」という言葉が好きです。
Shikohinとして同じことを聞かれたら、僕はこう答えたい。「Our religion is happiness.(私たちの宗教はハッピーネスです)」と。
大げさな幸福ではありません。日々の生活のなかにある小さな幸せを、きちんと見つけて味わう。そういう世界観を目指しています。
そこで鍵になるのがハーモニー、つまり調和とバランスです。心と身体の調和が取れていると、自然と整った状態が生まれてきます。
美は調和の中に宿る。自然に根ざした美の本質は、千年経っても変わらない。この二つが、僕らの合言葉です。千年前の平安時代にも、人々は白粉で肌を装っていました。美しくありたいという願いの中身は、いまもそう変わっていないはずです。
即効性ではなく、調和を育てる

だから僕らは、即効性を売りません。
スキンケアの軸に置いているのは「スキン・ロンジェビティ」、肌の長寿という考え方です。白キクラゲやセンテラ、ペプチドといった素材を、科学的な裏づけを確認したうえで取り入れる。
ボディケアではデトックスと筋肉の回復を、バスケアではマグネシウムを中心としたミネラルによるリラクゼーションを重視しています。この先はクレンザーや保湿ミスト、お香も控えています。
どれも、明日の朝いきなり別人になるための商品ではありません。ウェルネス市場でスピードや即効性が求められるなか、僕らは東洋的な調和を育てるほうを選びます。時間がかかることを承知で、何を優先するか考えたうえでの選択です。
日々の小さな習慣が積み重なった先にしか手に入らないものが、確かにある。そう信じているからこそ、僕らはこの道を選んでいます。


