振り返れば、僕の2026年の夏は、決勝まで日本代表を追いかけるはずの旅でした。その計画は、ブラジル戦の終了間際、あの一瞬であっけなく幕を閉じたのですが。
その幕切れとなった一戦を、あらためて振り返らせてください。6月30日、日本代表はワールドカップ決勝トーナメント1回戦(ラウンド・オブ・32)で、優勝5回を誇るブラジルと対戦しました。舞台はヒューストンのNRGスタジアム。結果は2対1で、日本は敗れました。
けれど、この試合を現地で見届けた僕の中に残ったのは、負けの悔しさだけではありませんでした。むしろ、ファウンダーとして深くうなずく光景がそこにあった。強豪に真っ向から挑む「挑戦者の作法」が、90分間ずっと詰まっていたんです。
4分のゴールから、王者との90分へ
日本のここまでの歩みは、見事なものでした。グループステージ第2戦のチュニジア戦は4対0の完勝。開始わずか4分に鎌田大地選手が決めた先制点は、日本のワールドカップ史上最速ゴールと紹介されました。続く最終戦のスウェーデン戦は1対1の引き分けに持ち込み、グループF2位で決勝トーナメントへ。危なげなく勝ち上がってきたわけです。
そして迎えたブラジル戦。世界のサッカーの「ゴールドスタンダード」とも言われ、過去の出場でつねにベスト16以上へ進んできた王者が相手です。1998年以来8大会連続出場の日本にとって、これ以上ない試金石でした。
先制し、王者を長い時間、封じ込めた

試合は、日本が先に動かしました。前半29分、佐野海舟選手が中盤で相手のパスミスを逃さずボールを奪い、そのまま持ち上がって先制点。1対0のまま前半を折り返します。
ここからが見ものでした。日本は守備の組織を保ち、ボールを握り続けるブラジルの攻撃を、長い時間はね返し続けた。5度の優勝を誇る王者を、90分の大半で自由にさせなかったんです。
しかし、王者はやはり王者でした。後半11分、カゼミーロ選手のヘディングで同点に追いつかれる。そして試合がそのまま終わるかと思われた後半アディショナルタイム6分、途中出場のマルティネッリ選手にファーサイドへ押し込まれ、2対1。あと一歩のところで、日本にとって初の決勝トーナメント突破は、こぼれ落ちました。
「差は縮まっている」という手応え
試合後、森保一監督が語った言葉が印象的でした。「差は縮まっている。ブラジルは間違いなくトップレベルのチームだが、僕たちは確実にその位置に近づいている」。だからこそ悔しい。まだ差はある。それでも近づいている。その両方を、監督は同時に口にしました。
さらに監督は、こうした強豪との対戦経験そのものが、日本サッカーの成長につながると語っています。試合前に選手へ伝えたのは「0対0に戻ったつもりで戦え」という言葉だったそうです。リードしても慢心せず、つねにリセットして目の前の一戦に挑む。守備を攻撃の起点にする。惜敗の中にも、次につながる芯がしっかりありました。
象徴的なのは、その後の展開です。日本を破ったブラジルも、次のラウンドでノルウェーに敗れ、姿を消しました。王者もまた、無敵ではなかった。日本が90分間、背中を追いかけていたのは、そういう相手だったわけです。差は、確かに縮まっている。
挑戦者は、当たった数だけ強豪に近づく
ここに、ファウンダーとしての学びが凝縮されています。
強豪との差は、一足飛びには消えません。広告や小手先の工夫で、王者の実力を一夜にして追い抜くことはできない。けれど、逃げずに真っ向からぶつかった回数だけ、差は確実に縮まっていく。惜しくも届かなかった一戦は、ただの負けではなく、組織を一段引き上げる経験になります。
僕たちが事業で大手や先行者に挑むときも、同じです。勝ち切れずに悔しい思いをしても、その勝負から逃げなければ、次はもう少し高いところで戦える。そしてたとえリードを奪っても、「0対0のつもり」で慢心しない。挑戦者でい続けることが、いつか本当に王者へ届く日の伏線になります。
2対1という結果以上に、僕はこの試合に、挑戦し続けるすべての人へのエールを見た気がしました。

