前回、アメリカには失敗を語る文化があるというお話をしました。実際にやってみたからこそ得られた知恵、僕が「実行知」と呼んでいるものに触れられるかどうかで、実行の成功確率も、引き際の見極めも変わってきます。
今回は、その実行知に直接触れてもらうためにTreasure Island Operating System(TIOS)で用意している2つの場と、そこへ進むための3か月のプログラムについてお話しします。
アメリカでの武者修行で、人と組織を鍛える
この実行知に直接触れる場として用意したいのが、アメリカでの武者修行です。社内で承認された事業計画を手に、小さな予算でアメリカに来てもらい、実際に事業を作ってきた経営者たちに正面からぶつける。ときにはボコボコにされるかもしれません。
アメリカの若い経営者は、そうなることを恐れないどころか、そうした機会を自ら探して、何度でも挑みます。そして、その過程で出会った「この人だ」と思える相手に、メンターになってほしいと自分から頼みに行くのです。
これから海外に出ていく日本の人たちにこそ、その経験をしてほしい。このプロセスを、TIOSでプロデュースしていきたいと考えています。
昔なら10年かけて積めた経験も、事業のスピードが上がった今は積みにくくなっています。だからこそ、誰と、どう話すかを経験できる場が要る。TIOSが最後に会社に残したいのは、そうした人と組織の力です。
秘密を守って話せる、経営ラウンドテーブル
このつながりの中心に置くのが、経営ラウンドテーブルです。日米の経営の最前線に立つ5〜8名が、固定のメンバーで集まります。同業の人は原則として別のグループに分け、話した内容は一切外に持ち出しません。
ここでは、誰かが正解を押しつけることはありません。話すのは、それぞれが自分で経験したことだけです。集まるのは四半期に1回、3〜4時間で、あいだの月にはオンラインで1時間ほど近況を共有します。運営の規約は全員で決めて署名し、進行は訓練を受けた経験豊富なファシリテーターが担当します。
話題は、異業種から見えるシグナル、参入のタイミング、体制づくりや人材、提携先の探し方などさまざまです。あるメンバーにとっては当たり前の話が、別のメンバーにとっては次の一手のヒントになる。同業の人を分けて異業種で集まるのは、そのためでもあります。
早すぎて失敗した話も、遅すぎて後悔した話も聞けるので、時機を見極める感覚も自然と身についていくでしょう。一度きりの相談ではなく、判断に迷うたびに戻ってこられる場所にしたいと考えています。
3か月のプログラムを通過して、ラウンドテーブルへ

ラウンドテーブルに参加できるのは、原則として、TIOSの入口にあたる3か月のプログラムを終えた会社です。
1か月目は、経営陣やチームへのインタビューを通じてTIOSが会社を理解し、変化のシグナルをレポートで届け始めます。2か月目には、注目するシグナルが自社にとって何を意味するかを考え、AIとメンターの支援で事業の機会を整理します。3か月目に、チームで勝ち筋を描いて事業提案と計画に仕上げ、判断を下すところまでが入口の範囲です。会社の側でかかる時間は、一人あたり合計20時間ほどです。
3か月後の会社には、レポートや判断の記録、変化を見抜く目と構想する力、そして日米のつながりが残ります。今、先行導入として一緒に取り組んでくれる会社を探しているところです。
戦略は、その会社をいちばん想っている人たちがつくり、育て続けるもの。TIOSは、そのための仕組みとして、これからも磨いていきます。

