【最終回】AIと人を融合する次世代「宝島」構想は偶然の出会いから生まれた

2025年7月に公開したシリーズ記事の最終回です。第1回第2回もあわせてどうぞ。

ロサンゼルスのゴルフ場で始まった、75歳の紳士スコットさんとの出会い。ディスレクシアと路上生活を乗り越え、莫大な富を築いた本物のアメリカンドリームの体現者であることは、前回お伝えした通りです。

この奇跡のような出会いが、僕がずっと温めていたある構想と結びつき、思いがけない方向へ動き出しました。今回はその始まりをお話しします。

僕が温めていた「宝島」の構想

当時の僕には、長く温めていたアイデアがありました。名づけて「宝島AIゲーム」。「AIと共に考え、AIを超えて描く」をコンセプトにした、ビジネスアイデアを生み出すための仕組みです。

大きく二つの段階に分かれています。前半は、AIの力で市場データやトレンド、顧客ニーズといった膨大な情報を整理し、多角的なアイデアを引き出す段階。後半は、そのアイデアをもとに、人間ならではの直感と経験、未来を構想する力を発揮して、具体的な事業プランへと育てる段階です。

AIの効率と人間の創造性を掛け合わせ、次世代のビジネスリーダーを育てる。それがこの構想の狙いでした。AIに答えを出させるのではなく、AIを良き相棒として使い倒したうえで、最後は人間が腹をくくって決める。そんな思考の型を、楽しみながら身につけてほしかったのです。

スコットさんが持っていた実行の知恵

この構想をスコットさんに話したところ、彼は驚くべき事実を打ち明けてくれました。なんと彼自身も、かつて独自の事業研修プログラムを開発していたというのです。

僕の構想が「企画立案」に重きを置くのに対し、彼のプログラムは「実行」に特化したものでした。研修生は実在する企業の財務データを渡され、その会社が抱える経営課題を解決していく。「さあ、あなたならどうする」と問いかけられ、具体的な行動計画を立てていく。とてもリアルなシミュレーションです。

これは、彼の波乱万丈な人生で培われた、実践に裏打ちされた知恵の結晶でした。

企画と実行が出会って動き出したもの

スコットさんの話を聞いた瞬間、僕は雷に打たれたような衝撃を受けました。

僕の構想は「企画立案」に、彼のプログラムは「実行」に強みがある。この二つを組み合わせれば、企画から実行までを一気通貫で鍛えられる、まったく新しいビジネス教育が生まれるのではないか。そう直感したのです。

スコットさんも深く同意し、さらに大きなビジョンを描いてくれました。「どうせなら会社向けの研修だけじゃなく、アメリカ中の大学を巻き込んでやろうじゃないか」と。その器の大きさに、僕は思わず唸りました。

この日、僕たちは海を望む絶景のコース、ペリカンヒルで一日を過ごしました。雄大な太平洋を眺めながら、未来のビジネスと教育について語り合った時間は、今も忘れられません。

たった数日のゴルフを通じて、僕たちは年齢も国境も超え、深い友情とビジネスパートナーシップを結びました。後日、彼の自宅を訪ね、構想をさらに深めたことも、よく覚えています。

あの日に芽生えた構想は、その後かたちを変えながら、今まさに動き出しています。AIの可能性と、人が積み重ねてきた経験や知恵。その二つが融合したとき、これからの時代に求められる新しい価値が生まれる。僕はそう確信しています。

この続きは、また別の機会に。どうぞお楽しみに。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。