先日サンフランシスコを訪れ、現地で会社を経営している人や、IT企業で働いている人たちと話をしてきました。
テーマは、AIが自分たちの仕事にどれだけ影響を与えているか。
返ってきた答えは、僕が想像していたよりもずっと生々しいものでした。
コードを書ける人から切られていく
AIの普及で、アメリカのIT採用は今、はっきりと二つに割れています。
需要が急激に伸びているのは、実際の業務内容を理解する経験者です。業務を理解した上で「何が必要か」を定義できる人。その要件をもとに「システムにこういう設計をさせよう」と指示を出せる人。さらに、AIが作ったものをテストして検証できる人。こうした上流の工程を担える人材の取り合いが、あちこちで起きています。
これは何もアメリカだけの話ではありません。日本でも、業務を分かった上で要件を定義できる人や設計を判断できる人の価値は、確実に上がっています。AIが進めば進むほど、「何を作るべきか」を決める側の人間が足りなくなるからです。
一方で、切られているのは若手です。シニアの指示を受けてコードを書く、いわゆるプログラミング専門で入ってきた新卒エンジニアたちが、次々と職を失っています。2026年の前半だけで、テック業界では15万人を超える人が職を失ったと言われていますが、その大半がこうした若手だと聞きました。 AIがコードを書けるようになった以上、「コードだけ書ける人」の座る椅子はどんどん消えていくのは必至。冷たい言い方ですが、それが現場で起きている現実でした。
切られた若手には行き場がない

もっと深刻なのは、切られたさらに先です。
解雇された若手には、次に行く場所がありません。要件を定義した経験がないし、どんなシステムを作るべきかを構想し、テストの要件まで組み立てて統括する力もないからです。
つまり、これまで「上の指示のもとで手を動かす」ことで食べてきた人ほど、AI時代に切り返す武器となるスキルを持っていないことになります。
スタンフォード大学の研究チームが膨大な雇用データを分析したところ、22歳から25歳の若手は、AIの影響を受けやすい職種で雇用が13〜16%も落ち込んでいました。同じ職種でも、経験を積んだ年齢層は、むしろ雇用が伸びています。数字にも、この分断がくっきり表れています。
昔なら、若手はまず現場で手を動かしながら経験を積み、少しずつ上流の仕事を覚えていきました。ところが、最初の入り口そのものがAIに置き換わってしまいました。若手が育っていく「過程の階段」が消えれば、5年後、10年後のシニアもいなくなるという理屈が成り立ちます。
この国のテック業界の先行きは、そういう根深い問題を抱えているのです。
AI時代に価値があるのはどんな人か

GAFAMのような巨大企業ですら、人材を切りすぎた反動で、今は厳しい調整を続けています。シリコンバレーで一度職を失うと、次のチャンスはなかなか巡ってきません。それくらい採用は絞られています。
これらの現実から僕が受け取った教訓は、シンプルなものでした。
AIに仕事を奪われるかどうかの分かれ目は、「AIに何をさせるか」を自分で決められるかどうかという、そのただ一点です。
手を動かす作業そのものは、これからどんどんAIの側に移っていきます。人間に残るのは、課題を定義し、設計を判断し、出てきたものの良し悪しを見極める力。要するに、AIを使う側に回れるかどうかなのです。
これはエンジニアだけの話ではありません。どんな仕事でも、「作業」に軸足を置いている部分はいずれAIに代替されていきます。だからこそ、自分の仕事のうち「判断」や「設計」にあたる部分はどこなのかを、今のうちに見極めておきたいものです。 経済や産業が大きく動くときには、必ずその裏側で新しい役割が生まれます。今回の変化も、ただ職が消えて終わりではないはずです。今のシリコンバレーは、その問いを僕たち全員に突きつけているように感じます。



