同じアメリカ経済の中で、笑いが止まらない勝ち組業界と、頭を抱えている負け組業界が、これほどくっきり分かれたのも近年では珍しいと思います。
前回、前々回と見てきたシリコンバレーの歪みは、実は経済全体で起きていることの一部でしかありません。
勝ち組は半導体と石油
今、明らかに追い風を受けているセクターは、半導体、防衛関連、そして化石燃料です。
半導体は、AIブームの本丸です。巨大企業がデータセンターに巨額を投じていて、その中心にあるのがNVIDIAをはじめとする半導体です。需要はまだ当分、伸び続けるでしょう。
防衛関連も同じです。世界のあちこちできな臭さが増すほど、この分野にはお金が流れ込みます。今年のように国際情勢が揺れる年は、なおさらでした。
そして、意外と見落とされがちなのが石油です。今のアメリカは、世界最大級の産油国になりました。シェール革命以降、国内で膨大な量の石油を掘れるようになり、エネルギーをほぼ自給できる国になっています。
今年、イラン情勢をきっかけにガソリン価格が跳ね上がった局面がありましたが、あのとき大きく潤ったのは、ほかでもないアメリカの石油会社でした。価格が上がって困るどころか、産油国として儲かる側に回っています。
政策が化石燃料を後押ししていることもあって、この流れはしばらく続くと思います。
しわ寄せは弱いところに来る

一方で、割を食っている業界はというと、僕たちのように、メキシコやカナダから入ってくる資材に頼らざるを得ない企業です。
北米の貿易協定をめぐる関税や、その見直しの動きのなかで、輸入資材のコストが軒並み上がりました。うちの場合、商品を送るための梱包材が、ナフサ価格上昇を理由に、ほぼ一律で15〜20%値上がりしています。
たかが梱包材、と思うかもしれません。でも、送る商品の数だけ必ず使うものなので、この十数%はそのまま利益を確実に削っていきます。強い業界が我が世の春を謳歌している裏で、こうした地味なコスト増を黙ってかぶっている企業が存在するんです。
皮肉なことに、こうした関税で守られる側に立つ国内の資材メーカーは、むしろ強気に値段を上げられます。同じ一つの政策が、一方には追い風、もう一方には逆風として働くわけです。
今のアメリカ経済は、どの業界に属しているかで、見えている景色がまるで違います。強いところはますます強く、弱いところはひたすらコストと向き合わされる。まさに「歪(いびつ)」としか言いようのない状況です。
歪みの中に、チャンスは生まれる

今記事では、ネガティブな話が続きました。
ただ僕は、今の悲観的な状況のまま終わらせるつもりはありません。経済が大きく片方に振れるときというのは、必ずその反対側に、これまでなかった隙間が生まれるものです。
コストが上がったのなら、上がらない代替をどう見つけるか。ある分野に資金が集中しているのなら、その周辺にどんな新しい需要が生まれるか。勝ち組が見落としている場所にこそ、次の商機は眠っています。
大事なのは、今どちらに風が吹いているかを正確に読んだうえで、自分たちの勝ち筋がどこにあるのかを、冷静に探し続けることです。
こういう時期に慌てて守りに入るのか、それとも落ち着いて隙間を取りにいけるのか。その差は、数年後に大きな違いとなって表れるはずです。 荒れた相場は、見方を変えれば、いちばんチャンスの多い相場だともいえます。この歪みがこれからどう動いていくのか、僕は引き続き、目を凝らして見ていきたいと思っています。



