前回の記事では、ロサンゼルスに誕生した未来型エンタメ施設「Cosm」の概要と、衝撃的な没入体験についてお話ししました。
当記事では、Cosmがいかにして生まれたのか、驚きの誕生秘話に迫ります。(CPO/CTOのデヴィン・プールマンさんから直接伺った話も交えて、ご紹介します)
構想6年、実現したのは2024年
Cosmの構想が始まったのは約6年前。会社設立が5年前で、実際にこのロサンゼルスの施設がオープンしたのは、なんとまだ10ヶ月ほど前(20243年後半)のことなんです。
では、この短期間でどうやってこれほど革新的な施設を作り上げたのか? その鍵は、「プラネタリウム技術」と「ある大富豪の存在」にありました。
プラネタリウム企業との出会い
Cosmの創業者たちは、全く新しい没入体験を創り出すにあたり、ある企業に目をつけました。それが、プラネタリウムの投影技術で世界的に有名な「Evans & Sutherland(エヴァンス&サザーランド、E&S)」とその子会社「Spitz(スピッツ)」です。
プラネタリウムと聞けば、誰もがイメージするのが天井に映し出される星空でしょう。E&SとSpitzは、プラネタリウムに不可欠なリアルな映像生成やプログラミング技術に長けていました。しかし、それはあくまで従来の「投影(プロジェクション)」技術。
Cosmが目指したのは、より鮮明で高輝度な「LEDウォール」による映像体験でした。
そこでCosmは、なんとE&SとSpitzを買収! プラネタリウムで培われた高度な映像生成技術と、最新のLED技術、さらにゲーム開発エンジンとして有名な「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」を組み合わせることで、誰も見たことのないレベルの映像体験を実現する基盤を作り上げたのです。これにより、Cosmはコンテンツ制作も自社で行えるようになりました。
大富豪スティーブ・ウィンの支援
革新的なアイデアと技術があっても、それを形にするには莫大な資金が必要です。ここで登場するのが、投資会社「Mirasol Capital(ミラソル・キャピタル)」とその創設者「Steve Winn(スティーブ・ウィン)」氏です。
「スティーブ・ウィン」と聞くと、ラスベガスの有名ホテル「Wynn Las Vegas」の創業者を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、実は同名の別人(スペルもWynnではなくWinn)。
こちらのSteve Winn氏は、不動産ソフトウェア会社「RealPage(リアルページ)」を創業し、後に数十億ドルで売却して巨万の富を得た、まさにアメリカンドリームを体現したような人物なんです。
Winn氏はこのCosmの構想に可能性を見出し、初期段階で多額の資金を提供しました。彼の強力なバックアップがあったからこそ、Cosmはその壮大なビジョンを実現へと進めることができたのです。
設計から運営まで一貫体制「垂直統合」
Cosmの強みは、単に施設がすごいだけではありません。施設の設計、建築、LEDウォールの設置、上映コンテンツの制作、ソフトウェア開発、そして日々の運営に至るまで、そのすべてを自社で一貫して行っている点です。
これらを総じて、「垂直統合モデル」と言います。
これにより、コンセプトから実際の体験まで、一切の妥協なく、クオリティを極限まで高めることができるのです。僕がバックステージを見学させてもらった時も、その徹底ぶりには驚かされました。
古い技術(プラネタリウム)に新しい価値を見出し、最新技術と融合させ、さらに強力な資金力を得て、設計から運営まで全てをコントロールする……
まさに異色の組み合わせが生んだ奇跡、それがCosmなのです。
次回は、実際にCosmを体験した感想や、その人気の秘密やエンターテイメントの未来について、深く掘り下げていきたいと思います!

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