【前編】世界最高峰のウニでも優雅なリッツ・カールトンでもなく、起業家のリトリートで持ち帰った真に価値あるもの

先日、所属している起業家ネットワーク「EO(Entrepreneurs’ Organization)」の年に一度のリトリートに参加してきました。

場所は、ロサンゼルスから車で北へ3時間ほど走ったサンタバーバラ。海の見えるリッツ・カールトンに2泊して、朝から晩まで「経営」と「人生」について語り合う、そんな数日間でした。

こう書くと「ずいぶん優雅な集まりですね」と思われるかもしれません。実際、優雅です。でも、僕がこの場から毎回持ち帰るものは、贅沢な思い出ではありません。経営者にとって、こういう場こそが一番の投資になるという話を今日はさせてください。

サンタバーバラのウニは、北海道と肩を並べる

会場のサンタバーバラ、実はウニの名産地なんです。日本のみなさんにはあまりピンとこないかもしれませんが、サンタバーバラ産のウニは世界中の寿司職人が欲しがる高級食材で、日本にも輸出されています。築地でも高値で取引されてきた、れっきとしたブランドものです。

味は、北海道のウニに匹敵するとも言われるほど。甘みが強く、口の中でとろけて、磯の香りがふわっと広がる。アメリカでこんなウニに出会えるとは、移住したばかりの頃は想像もしていませんでした。

このウニを、気の置けない仲間たちと囲みながら、夜遅くまで事業の話をする。朝はヨガから始まり、合間にはゴルフ場で絶景を眺めながらクラブを振る。崖の上に広がる海岸線のコースは、それだけで一枚の絵のようでした。

ただ、誤解しないでほしいのは、これは「ご褒美旅行」ではないということです。

経営者が年に一度、本気で「缶詰」になる意味

このリトリートは、3年連続で同じ会場で開かれています。参加するのは、EOのロサンゼルス支部のメンバー。今回は60人ほどが集まりました。

プログラムは想像以上にハードです。初日の午後に始まり、最終日の午前まで、ほぼ缶詰状態。三度の食事をともにしながら、会社のこと、経営のこと、そして人生そのものについて、ひたすら語り合い、学び合う。遊びの要素もたっぷりありますが、本質は「学びの場」なんです。

経営者という仕事は、孤独です。会社のなかでは、最終的な判断を下せるのは自分一人。社員にも家族にも言えない悩みを、誰にも相談できないまま抱え込むことがよくあります。

だからこそ、同じ立場の仲間と、利害関係なしに本音で語り合える場所が必要になるんです。同じ痛みを知っている人にしか、わからないことがあるから。日常を完全に離れた非日常の空間で、二日半まるごと自分と向き合う。これは、オフィスにいたら絶対に手に入らない時間でした。

ウニやゴルフは「入り口」にすぎない

正直に振り返ると、参加する前の僕は、リトリートのことをどこか「豪華な親睦会」くらいに考えていた時期がありました。でも、回を重ねるごとに、ここで交わされる会話の深さに気づかされたのです。

ウニも、ゴルフも、海の見える部屋も、すべては心をほどくための入り口にすぎません。日常の鎧を脱いで、はじめて本音が出てくる。本音が出てはじめて、本当の学びが始まる。豪華な舞台装置には、ちゃんと意味があったわけです。

そして今回のリトリートには、僕の心を強く揺さぶる、ひとつのプログラムがありました。仲間たちが、自分の人生のいちばん深いところを15分間で語る、という時間です。

それは僕に「自分も挑戦してみたい」と強く思わせ、同時に「本当に自分にもできるのか」とひどく怖気づかせました。好奇心と征服欲のプラス極と、不安と躊躇のマイナス極の間で、振り子のように心が揺れ動いた体験です。結局どうしたかについては、後編でじっくりお伝えします。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。

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