前回のポストでは、AIによって「誰もがIPをいじれる時代」になったことで、単に禁止するだけでは立ち行かなくなっている、という話をしました。
では、コンテンツ大国アメリカのプレイヤーたちはどうしているのでしょうか。実は、彼らの動きは非常に早くて合理的です。今回は「巨大スタジオ」と「新興勢力」、2つの視点から見ていきましょう。
巨大スタジオの決断│ディズニーの許諾ベース戦略
まず注目すべきは、ディズニーのような「オールドメディア」と呼ばれる巨大スタジオの動きです。彼らはIPをガチガチに守るイメージがありますよね。実際、無断使用に対しては厳しい訴訟も辞さない姿勢です。
しかし、彼らはただ守っているだけではありません。非常に興味深いのが、「AIプラットフォーム自体をライセンス契約で囲い込む」という動きです。
例えば、ディズニーはOpenAIと提携し、動画生成AI「Sora」の学習や生成において、自社のキャラクターを「公式に」使えるようにする契約を結びました。ただ使わせるだけでなく、10億ドル規模の出資までしていると言われています。
「ファンが勝手に変なものを作るくらいなら、公式が認めた安全なAIツールを使わせて、そこで遊んでもらおう」という発想の転換です。
公式ツールを使えば、俳優の肖像権を守ったり、不適切な表現(エログロなど)をシステム側でブロックしたりできます。ファンが楽しんでくれるなら、新たなエンゲージメントも生まれるし、収益も得られます。
「絶対に入るな!触れるな!」と全面禁止するのではなく、「ココへおいで!いっしょに楽しくやろうよ」と管理された自由を提供する。
─これが、アメリカのメジャープレイヤーが出した一つの答えでしょう。
新興勢力の戦略│拡散スピードこそ命
一方で、ネット発の新興IPプレイヤーたちの考え方はもっと先鋭的です。
例えば、YouTube発のアニメ『ハズビン・ホテル』などを手掛けるクリエイターたちは、AIやショート動画を「脅威」ではなく「成長エンジン」と捉えています。
彼らにとって一番のリスクは「パクられること」ではなく、「知られないこと」。
ファンがAIツール(MidjourneyやSoraなど)を使って二次創作を作り、TikTokなどで拡散してくれることを歓迎しています。ファンを「侵害リスク」ではなく「配信パートナー」として見ているんですね。
オリジナリティを守るよりも、文化的な浸透スピードを優先する。まだ守るべき巨大なブランド資産がないからこそ取れる戦略かもしれませんが、今の時代の空気感をうまく捉えています。

揺れるコンテンツ業界
アメリカでは「守りながら攻める大手」と「拡散全振りの新興勢力」が入り乱れている状況です。さらに最近では、「Netflixのワーナー・ブラザース買収が約830億ドルで合意された」ということが報道されました。
ワーナーといえば、『ハリー・ポッター』や『バットマン』など強力なIPの宝庫です。Netflixのようなプラットフォーマーが、AI時代にさらなるコンテンツの種(IP)を欲している証拠でしょう。AIで生成するための「素材」としても、良質なIPの価値は爆上がりしているわけです。
では、激動の中で、我らが日本のコンテンツ企業はどう立ち回るべきなのか。
次回の最終回では、日本独自の強みと、僕が考える「日本企業への提言」について書こうと思っています。


