トランプ大統領がDEI廃止を宣言した2025年から1年あまり。アメリカ企業の対応は大きく3つに分かれています。
DEIの看板を下ろした企業、堂々と維持する企業、静かに様子をうかがう企業。連続シリーズ第2回では、各企業の具体的な動きを掘り下げます。
DEIを縮小・撤回した企業たち
真っ先にDEI施策を見直したのは、誰もが知る超大手でした。
メタはDEI専門部署を廃止し、採用の多様性目標も撤回。アマゾンやグーグルも同様にDEI関連の取り組みを縮小しています。小売最大手のウォルマートはLGBTQ+関連商品の販売を制限し、社内から「DEI」という言葉自体をなくす方針に転じました。
金融業界ではゴールドマン・サックスが取締役会の多様性指針を撤廃し、シティグループもDEI目標を廃止。これらの企業に共通するのは、トランプ政権との関係や保守派からの圧力にさらされていたという背景です。
ある識者は「企業はDEIをやめたかったのではなく、やめる”口実”を待っていた」と指摘しています。多額の費用をかけた多様性研修に効果を実感できていなかった企業にとって、政権の方針転換は渡りに船だった面もあるようです。

圧力に屈しなかった企業たち
一方、政治的な逆風のなかでもDEI方針を貫く企業があります。代表格がアップルとコストコです。
2025年2月のアップル株主総会では、保守系シンクタンクが「DEI施策を廃止すべき」と株主提案を出しました。しかし反対票は約98%。アップルは「DEIの廃止は組織に悪影響を与える」と明確に反論しています。
コストコも19州の共和党司法長官からDEI撤回を求められましたが、これを拒否。リーバイスでも同様の提案が出されましたが、賛成率はわずか0.6%でした。
つまり、企業の株を実際に持つ投資家たちは、DEIに経営上の価値を認めているということ。政治的な圧力と市場の評価には、大きなギャップがあるのです。
様子見を続ける「静観型」
明確な方針を打ち出さない「静観型」も多く存在します。DEIの旗を掲げ続ければ政権ににらまれ、急に下ろせば従業員や消費者の信頼を失う。このジレンマのなかで判断を保留している企業が、実は一番多いともいわれています。
なお、トランプ政権の反DEI大統領令をめぐっては司法でも争いが続いており、法的にもまだ決着がついていない状況です。この不確実さが、企業の判断をさらに難しくしています。

DEIへの対応が企業の「試金石」に
かつてアメリカ企業の共通語だったDEIは、いまや企業の姿勢や価値観を測る試金石に変わりました。政治の風向きに合わせて看板を下ろすのか、自社の信念を貫くのか。その選択が、従業員・消費者・投資家すべての評価に影響する時代です。
次回(第3回・最終回)では、この動きが日本にどう波及するのか、そしてDEIの概念はどこへ向かうのかを考えます。



