アメリカで日本発のウェルネスブランドを展開するとなると、とんでもない数の競合を戦うことになります。
韓国コスメ、フランスの高級スキンケア、オーガニック先進国のオーストラリア勢……。その中で日本ブランドがどう戦うか。僕がたどり着いた答えは、「何をやるか」ではなく「何をやらないか」を決めることでした。
日本のウェルネスは「自然と精神」から生まれた

日本の国土の約67%は森林に覆われています。OECD加盟国の中でもフィンランドに次いで世界第2位の森林率。そして四方を海に囲まれた島国です。この環境が、日本独自のセルフケア文化を育んできました。
温泉に浸かって体を整える「水の文化」
発酵食品や旬の食材で内側から調える「食養生」
森林浴に代表される自然との調和、指圧や禅で心身を統合する知恵。
さらに茶道・華道・香道のように、日常の営みを「道」として昇華させる精神性。
僕はこれらの素晴らしいポテンシャルを、ただの「和」のイメージ商品に終わらせたくはありませんでした。 Shikohinが目指すのは、日本の自然と精神文化から生まれる「清めのリチュアル(習慣)」。神社仏閣を訪れたときに感じる、あの心身が静かに整っていくような感覚を、毎日の暮らしの中に届けるブランドです。
マイケル・ポーターのトレードオフ戦略
経営戦略の世界には「トレードオフ戦略」という考え方があります。提唱したのは、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授。
要するに「あれもこれも」ではなく、自分たちが何をやって何をやらないかを明確に決めることで、競合が真似できない独自のポジションを築く、という発想です。星野リゾートの星野佳路さんも実践していることで知られています。
Shikohinでは、このトレードオフを徹底しています。他ブランドが「外見の美」を追求するなら、僕たちは「生き方としてのウェルネス」を選ぶ。
速効性を売りにする「ファストビューティー」が主流なら、僕たちは「スローリチュアル(整える習慣)」を提案する。
競合がバズるマーケティングに頼るなら、僕たちは日本文化の普遍的な価値をオーセンティックに発信する。
ひとつだけ逆張りした程度では、差別化にはなりません。全部を一貫させて初めて、他社が簡単に真似できない構造が生まれる。これがトレードオフ戦略の本質です。
少数でも「コアなファン」を選ぶ

Shikohinのマーケティングで掲げているのは、「100万人の『いいね』よりも、100人の『ラブ』」。
フォロワー数の多いインフルエンサーに依存するのではなく、ウェルネスや美容の現場で本当に信頼されている人たちを通じて発信していく道を選びました。
西洋的な速効性を追求するウェルネスが主流のアメリカ市場で、東洋的な調和を育むウェルネスをどう届けるか。拡散力ではなく、信頼の蓄積で成長する。その具体的な仕組みについては、次回の記事で詳しくお話しします。

