前回の記事では、人生の現在地を可視化する「Wheel of Life」と、自分の軸となる価値観を見つける「Core Values Exercise」についてお話ししました。いわば、自分という船の「現在地」と「コンパス」を手に入れたわけですね。
しかし、自己分析には一つ落とし穴があります。それは、どうしても「主観」の壁を越えられないこと。自分が見ている自分と、他人から見えている自分は、案外違うものです。
そこで今回は、「Living Legacy」ワークショップの中でも特にユニークで、僕自身も大きな発見があった「Why Friends Exercise」をご紹介します。これは、信頼できる友人という「鏡」を通して、自分では気づけなかった「本当の自分」を発見する、ちょっと勇気がいるけれど、非常にパワフルなエクササイズです。
「どうして友達でいてくれるの?」と、勇気を出して聞いてみよう
エクササイズの内容は、驚くほどシンプルです。あなたが心から信頼し、どんな時でも駆けつけてくれるであろう親友を3〜5人思い浮かべてください。そして、その一人ひとりに、こう尋ねるのです。
「どうして、私(僕)と友達でいてくれるの?」
どうですか?想像しただけで、ちょっと照れくさくて、勇気がいりますよね(笑)。「なんだよ急に、気持ち悪い!」なんて言われたらどうしよう、と不安になるかもしれません。
でも、この質問こそが、客観的な自己認識への扉を開く鍵なのです。なぜなら、利害関係のない親友ほど、あなたの本質を曇りなき眼で見てくれている存在はいないからです。
もちろん、いきなり聞くのはハードルが高いので、「今、自己分析のワークをやっていて、客観的な意見がすごく参考になるから」と正直に背景を伝えるのがコツです。真剣なあなたを見て、きっと友人も誠実に向き合ってくれるはずです。
沈黙は金。友人の本音を引き出す「聞き方の極意」
さて、いざインタビューを始めても、おそらく最初は「え?うーん、優しいからかな」「話してて面白いし」といった、当たり障りのない答えが返ってくるでしょう。
─ ここからが本番です。
「ありがとう。でも、優しい人や面白い人なんて他にもたくさんいるよね。その中で、なぜ”私(僕)”と一緒にいてくれるんだろう?」
と、もう一歩だけ踏み込んでみてください。大切なのは、ここからです。友人はきっと言葉に詰まり、沈黙が流れるでしょう。この沈黙こそが、相手が心の奥底にある本音を探しているサインです。
気まずさから、つい「つまり、こういうことかな?」と助け舟を出したり、話を遮ってしまったりしがちですが、そこをぐっとこらえてください。ひたすら待ち、耳を傾けるのです。
やがて友人は、主語を「You(あなたは〜な人だ)」から「I(私は〜感じる)」に変えて語り始めます。
「あなたといると、すごく気持ちが楽になるんだ」
「あなたと話していると、物事を広い視点で見られるようになる気がする」
この「I feel…」の言葉こそ、あなたがその友人に与えている、本質的な価値なのです。
友人からのフィードバックで見えた「自分の提供価値」
実際に僕も、このエクササイズを数人の親友と行いました。彼らから返ってきた言葉には、驚くほど共通点がありました。
・Loyal & Trustworthy(誠実で、信頼できる):一度決めたことは必ずやり遂げるし、絶対に裏切らない。
・Inspiring & Optimistic(刺激的で、前向き):一緒にいるとポジティブなエネルギーをもらえて、モチベーションが上がる。
・Values-driven & Globally minded(価値観に基づき、グローバルな視点を持つ):自分の軸がしっかりしていて、文化の違いを超えて人と深く繋がろうとする。
・Fun & Dependable(楽しくて、頼りになる):どんな状況でも頼れるし、何より一緒にいて楽しい。
これらの言葉は、僕が自分ではあまり意識していなかった側面でした。自分が知らず知らずのうちに、周りの大切な人たちにこんな価値を提供できていたんだと知った時、胸が熱くなると同時に、大きな自信が湧いてきました。
これは、起業家やリーダーにとって非常に重要な気づきです。僕たちは商品やサービスという「機能的価値」を提供するだけでなく、自分自身の存在そのものが「感情的価値」を提供しているのです。
客観的な自己認識が、あなたのビジョンをより強固にする
このエクササイズで得られるのは、単なる自己満足ではありません。自分が掲げるビジョンや事業が、独りよがりな思い込みになっていないかを確認するための、極めて重要な客観的データです。
前回手に入れた「主観的なコンパス(コアバリュー)」と、今回手に入れた「客観的な評価(友人からのフィードバック)」。この2つが揃った時、あなたの自己認識は一気に解像度を増し、より強固なものになります。
さあ、自分という船の性能と、周りからどう見えているかが明確になりました。いよいよ次が最終回。この船でどこを目指すのか、人生の壮大な目的地「BHAG(Big Hairy Audacious Goal)」を設定する旅に出ましょう!




