人の真価は、目に見える表側だけでは決まらない。本当に差が出るのは「骨格」だ。
そう確信させてくれたのは、ある経営者との出会いでした。
ヴィンテージ家具が教えてくれたこと
冒頭の彼女は、数多くの人気カフェを手がけてきた人です。彼女の創り出すお店には、不思議な魅力があります。ウィンドウ越しに店内のインテリアが目に入ると、「この店に入ってみたい」と強く惹きつけられてしまうのです。
魅力の秘密を知りたくて、「すてきな空間ですね。特に家具がいい」と話を向けました。すぐに「店内の家具は全て、本物のヴィンテージなんです」という答えが返ってきました。
彼女は続けて、「ヴィンテージ家具の価値は、骨格にあるんです」と、教えてくれたのです。
ヴィンテージ家具は、布地やクッションを張り替えても価値はほとんど下がらないそうです。むしろ、丁寧にリペアすることで、さらに輝きを増します。
でも、脚を切ったり、フレームを改造したりした瞬間、その家具は価値を失ってしまうのだとか。
入手困難なマホガニーやチークといった希少な素材と、美しく機能的な構造を成す堅牢な作り。つまり、家具の『骨格』にこそ、何十年も愛される理由があるのです。
価値の源泉は、構造と素材という『骨格』にあり
彼女の説明を聞いて、ハッとしました。
「人間も同じだ……」
流行のスキルや肩書きは、家具でいうところの布地やクッションにすぎません。思想や行動原理こそが骨格であり、そこさえ揺らがなければ、時代が変わっても価値は残リ続けるはずです。

人を引きつけるものには全て「型」がある
彼女とのやり取りの中で、もうひとつ別の言葉が頭に浮かんできました。
「あっ、これって武道でいう『型』だ!」
ヴィンテージ家具の骨格も、それを作り出す職人の技能も、そして思想や行動で周囲を惹きつける人も根っこは同じで、すべて共通の『型』があるのです。
荻生徂徠に学んだ『思考の型』
大学卒業後の8年間、師事した恩師から、『型』の重要性を学びました。
毎週の座学で叩き込まれたのは、江戸時代の儒学者・荻生徂徠(おぎゅう そらい)の思想でした。なかでも印象深いのが「和而不同(わじふどう)」という概念です。
これは単に「周囲と協調する」という道徳論ではありません。
◉色が混ざって灰色になるのではなく、赤は赤のまま、青は青のままで調和すること
◉自分を消して周りに合わせるのではなく、異質であることを前提に全体と響き合うこと
この「異質のまま調和する」という思考の型が、僕の骨格の土台となりました 。海外で事業を展開する際も、この揺るぎない軸があったからこそ、自分を見失わずにいられたのだと実感しています。

直心影流による『身体の型』
僕がもう一つ学んだものとして、直心影流(じきしんかげりゅう)による「身体の型」があります
直心影流は、戦国期にルーツを持つ実戦的な流派です。華やかな動きよりも、基本の反復を重んじます。
型どおりに動くのは、一見すると不自由に思えるでしょう。しかし、型が身体に染み込んでいると、予想外の事態に直面しても、頭ではなく身体が先に反応するようになります。
ビジネスも同様です。思いもよらぬトラブルに見舞われても、慌てずに対処できる人は、自分なりの判断軸と行動や経験を土台にした「型」を持っているものです。
骨格が整えば何度でも立ち上がれる
表面的なテクニックは、わりと簡単に変わります。しかし骨格は、そうそう変わりません。もちろん、スキルのアップデートも大切ですが、それだけでは長くは続かないでしょう。骨格さえ整っていれば、何度でも立ち上がれるのです。
しっかりとした思想の骨格を持っていれば、ヴィンテージ家具のように、いつかどこかで関わった人を惹きつけてやまない存在になれるのではないでしょうか。
それこそが価値ある自分を作る近道なのです。

