2026年。ここに来て「DEI」という言葉を、ニュースで見かける機会がまた増えている気がします。
実はいま、このDEIをめぐってアメリカ社会が大きく揺れているのです。
今回は連続3回シリーズの第1回として、DEIとは何か、なぜここまで注目されているのかをわかりやすくお伝えします。
DEIを現す3つの言葉が意味すること
DEIとは、
- Diversity(多様性)
- Equity(公平性)
- Inclusion(包摂性)
の頭文字を取った言葉です。
ひと言でいえば、「性別や人種、年齢、障がいの有無に関係なく、誰もが公平にチャンスを得られる社会や職場をつくろう」という考え方のこと。
かつては「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」が主流でしたが、2020年前後から「Equity(公平性)」が加わり、DEIという表現が定着しました。単に多様な人を集めるだけでなく、一人ひとりの状況に応じた公平な機会の提供まで含む、より踏み込んだ概念です。
なぜDEIはここまで注目されるようになったのか
DEIの考え方は、アメリカの公民権運動(1950〜60年代)にさかのぼります。人種差別の撤廃を求めるなかで生まれた「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」が出発点です。
大きな転機は2020年。ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動が全米に広がり、企業にもDEI推進を求める声が一気に高まりました。バイデン前大統領はこの流れを受け、連邦政府として積極的にDEIを推進する政策を打ち出しています。
ところが2023年6月、米連邦最高裁が大学入試での人種考慮を「違憲」と判断。ここからDEIへの反発が急速に広がりはじめました。
2025年、トランプ政権がDEI「終了」を宣言
2025年1月、第2次トランプ政権が誕生。大統領は就任初日に連邦政府のDEIプログラムを終了させる大統領令に署名し、翌日には民間企業にもDEI撲滅を働きかけるよう各省庁に指示しました。
就任演説では「性別は男女の2つのみ」と宣言し、前政権の多様性政策を真正面から否定。DEIは人事施策の枠を超え、アメリカの価値観そのものをめぐる対立の象徴になっています。

DEIは「知っておくべき」時代のキーワード
DEIは、多様な人がそれぞれの力を発揮できる社会をつくるための考え方です。しかし2025年以降、推進と反発が激しくぶつかり合い、社会を巻き込んだ大きなうねりが生まれています。
次回(第2回)は、アメリカ企業がこの波にどう対応しているのか——「撤退する企業」と「守り抜く企業」の明暗をお伝えします。



