アメリカではトランプ政権のもと、DEIに強烈な逆風が吹いています。
では、多様性という考え方そのものが「終わった」のでしょうか? シリーズ最終回では、日本企業への影響と、多様性の未来について僕なりの視点でお伝えします。
アメリカの反DEIは日本にも波及するのか
結論から言えば、アメリカの状況をそのまま日本に当てはめるのは早計です。
アメリカのDEIは、人種差別や公民権運動という長い闘いの歴史のうえに成り立っています。一方、日本では「女性活躍推進」や「働き方改革」が中心で、取り組みはまだ道半ば。少子高齢化で深刻な人手不足に直面する日本にとって、多様な人材を活かすDEIの発想はむしろ不可欠です。
ただし注意点もあります。2025年以降、米国政府は在外大使館を通じて取引先企業にDEI関連の質問票を送付し、大統領令への遵守を求める動きを見せています。米国と取引のある日本企業は、対応を迫られる可能性もあるのです。
DEIは「終わり」ではなく「進化」している
アメリカでも、DEIが完全に消えたわけではありません。「DEI」という名称こそ使わなくなった企業でも、中身を別の形で続けているケースは少なくありません。
最近注目されているのがDEI&Bという概念。従来のDEIに「Belonging(帰属意識)」を加えたものです。多様な人材を集めるだけでなく、一人ひとりが「ここに自分の居場所がある」と感じられる環境づくりに重点を置いています。
「DEI」というラベルが政治的に敏感になった以上、同じ理念を別の言葉で推進するほうが実効性が高い。これは現実的な判断でもあります。大事なのは「何と呼ぶか」ではなく「実際に何をやっているか」なのです。
AI時代にこそ、多様性の価値が問われる
AIが多くの業務を代替するようになると、人間に求められるのは「創造性」や「共感力」、「異なる視点からのアイデア」——まさに多様性が力を発揮する領域です。
均質なチームでは生まれない発想が、異なるバックグラウンドを持つメンバーの化学反応から生まれる。テクノロジーが進化するほど、「人間らしさ」の価値が高まり、その源泉こそが多様性ではないでしょうか。

多様性は「流行」ではなく「土台」
DEIという言葉がどう変わろうと、多様な人々がそれぞれの力を発揮できる社会をつくるという理念は変わりません。
特に日本は、人口減少と国際化が同時に進むなかで、多様な人材の力を活かすことが経営戦略そのものになる時代。アメリカの政治的な揺り戻しに惑わされず、自社にとって本当に必要な取り組みを地に足をつけて進めていく。その姿勢こそが、これからの企業に求められていると僕は考えています。




