ベゾスが60億円投じた映画『メラニア』巨大テック企業がトランプにすり寄る理由

Amazonの創業者ジェフ・ベゾスが、トランプ大統領夫人メラニアのドキュメンタリー映画に4,000万ドル(約60億円)を投入。

映画は……まるでヒットしていません。それでもベゾスが巨額を注ぎ込んだのには、ビジネスの生死をかけた計算があります。

映画『メラニア』に4,000万ドル。ベゾスの異常な「投資」

2026年1月30日、メラニア・トランプ大統領夫人のドキュメンタリー映画『Melania』が全米で公開されました。

2025年1月のトランプ大統領の第2期就任式を追った内容で、監督はブレット・ラトナー。配給はAmazon MGM Studios。

注目すべきは、その金額です。Amazonがこの映画の配給権に支払ったのは4,000万ドル(約60億円)で、これはドキュメンタリー史上最高額とされています。さらにマーケティングに約3,500万ドルを投じ、合計で7,500万ドル(約110億円)規模のプロジェクトになりました。

しかも、報道によるとその4,000万ドルの70%以上、つまり約2,800万ドル(約42億円)がメラニア夫人本人の取り分になっているといいます。

一方、全米興行収入は約1,640万ドル。どう計算しても大赤字です。ビジネスとして見れば、到底成立しない取引。では、なぜベゾスはこんな「投資」をしたのでしょうか。

テック企業トップが競うように「トランプ詣で」をする理由

僕がこの話に注目したのは、ベゾスだけの問題ではないからです。

メタのマーク・ザッカーバーグ、Appleのティム・クック、Googleの経営陣。名だたるテック企業のトップが、再選したトランプ大統領のもとに続々と集まっています。映画のホワイトハウス試写会には、クックやZoomのCEOまで顔を揃えていたほどです。

大統領に直接お金を渡すことは、法律で禁じられています。でも、大統領夫人の映画に「配給権料」や「出演料」として支払うことは違法じゃありません。

アメリカの議員たちもこの構図に目をつけ、Amazonに対して反贈賄法の観点から説明を求める書簡を送っています。 なんともあからさまなご機嫌取り。つまりそこには、トランプ政権との関係が自社の将来を左右するという切迫した事情があるからです。

AWSとブルーオリジン。ベゾスが「何としても」守りたいもの

Amazonの屋台骨は、もはやネット通販ではありません。クラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」が利益の柱であり、政府機関や国防総省との巨額契約も抱えています。

さらにベゾスが個人で投資する宇宙開発企業「ブルーオリジン」は、NASAから数十億ドル規模の契約を獲得済みです。

AI時代の到来でクラウド需要はさらに膨張し、政府との関係はいっそう重要になります。

トランプ大統領は、自分に利益をもたらす相手を優遇する姿勢を隠しません。だからこそベゾスは、あからさまと思われても構わず、映画というかたちでトランプ家との関係構築に動いたわけです。まるで映画『ゴッドファーザー』のドン・コルレオーネに謁見(えっけん)するかのように……。

僕は正直、この話を知ったときAmazonに対する見方が少し変わりました。日本でもコロナ禍以降、生活インフラとして根付いたAmazon。でもその裏では、政治と巨大資本がここまで露骨に結びついているんですね。

ビジネスの世界では、ルールの範囲内ならなんでもアリなのか。それとも、僕たち消費者にもできることは何かあるのか。一人ひとりが考えるべきタイミングかもしれません。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。