【起業家の原点】90歳目前の「ベンチャーの母」今野由梨さんが教えてくれた、AI時代に一番大切なこと

日本初の電話相談サービスを立ち上げ、「ベンチャーの母」と称される今野由梨(こんの ゆり)さん。

彼女はかつて、就職活動の面接でこんな言葉を投げつけられました。

「お前なんて、お茶汲み以外に何ができるんだ?」

しかし今野さんは、決して屈することなく、自らの力で時代を切り拓いてきた生きた伝説です。

今年の仕事始めとなった1月5日。幸運にも今野さんとお会いする機会をいただきました。そこで僕が自身のAI事業についてプレゼンしたところ、彼女から返ってきたのは……。

AIという最新技術の話ではなく、ビジネスの「魂」に関する熱い言葉でした。

今回は、90歳近い伝説の起業家が教えてくれた、これからの時代に最も必要な「あるもの」についてお話しします。

女性蔑視の逆境をバネにした反骨精神

まず、今野由梨さんという方がどれほど並外れた経営者か、少し紹介させてください。

彼女が就職活動をしていた約60年以上前の日本。世の中は女性がバリバリ働くことなど、まるで想定していない時代でした。

「社長を目指します!定年まで働きます!」と面接で訴えた彼女に対し、企業の人事担当者(全員男性)は、苦笑いを浮かべてあきれ返り、侮蔑的な言葉を投げつけました。結果は全滅だったそうです。

しかし、彼女はそこで腐りませんでした。

「雇ってくれないなら、自分でやる」と、なんとコンパニオンの仕事でお金を貯め、32歳で起業。主婦の孤独や育児ノイローゼを救う「赤ちゃん110番」など、日本初の電話相談サービスを次々と立ち上げました。

「ダメ」と言われたら、自分の道を作る。この強烈な反骨精神こそが、彼女を戦後の日本を代表する経営者に押し上げた原動力でした。

AI事業「TIAG」をレジェンドにプレゼン

そんな伝説の方に、僕が進めているAIプロジェクト「TIAG(Treasure Island AI Game)」のコンセプトを聞いていただきました。

普通なら「高齢の方に最新のAIの話が通じるのか?」と思うかもしれません。ところが、彼女の感性は驚くほど若く、鋭いものでした。

僕が伝えたのは、技術の話ではありません。

「これからのAI時代、知識やフレームワークは誰でも手に入る。だからこそ、『なぜ自分がやるのか』という使命と情熱が不可欠なんです」

「日本人が持つ道徳心や品質へのこだわりをAIに掛け合わせれば、世界に勝てる価値が生まれます」

そう熱弁すると、彼女は深く頷き、僕たちのビジョンに強く共感してくれました。年齢なんて関係ない。本質を見抜く力に圧倒されました。

技術よりも大切な「使命(パーパス)」と「情熱」

今回の対話で僕が確信したのは、「事業の核となるのは、結局は『人』の想いである」ということです。

AIを使えば、事業の「型」は簡単に作れます。しかし、そこに命を吹き込むのは人間です。

事業を進める上で、常に問われるべき問いがあります。

  • なぜ、あなたがやるのか?
  • どのような未来を実現したいのか?
  • なぜ、顧客はあなたを選ぶのか?

この問いに答えるための「使命(パーパス)」と、それをやり遂げる「情熱(パッション)」。

戦後の何もない時代から道を切り拓いてきた今野さんの姿は、まさにその体現でした。

「外から革命を起こして、日本の価値を世界に知らしめたい」

僕がそう伝えた時、彼女が喜んでくれたことは、新年早々、何よりの自信と勇気になりました。偉大な先人のバトンを受け継ぎ、僕も「反骨精神」でAI時代を突き進んでいきます。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。