「もう黙ってはいられない」
アメリカを代表する会員制スーパー「コストコ」が、ついにトランプ政権を相手取って訴訟を起こしました。(提訴は2025年11月末)
争点は、「関税」です。
単なる『一企業の裁判』だと受け流すべきではありません。この訴訟の行方が、アメリカ経済の大きなターニングポイントになる可能性があると僕は考えています。
なぜ今、コストコは立ち上がったのか
これまで多くの企業は、トランプ大統領との対立を避けてきました。下手に逆らえば、SNSで攻撃され、不買運動を煽られ、株価を暴落させられるリスクがあるからです。
実際、今年4月にAmazonが関税による価格上昇を表示しようとした際、ホワイトハウスから『敵対的で政治的な行為だ』と批判されたと報じられています。
しかしコストコは、あえてその「暗黙のルール」を破りました。
11月末に提訴された訴訟の内容はこうです。コストコは、トランプ大統領がIEEPA(国際緊急経済権限法)を使って課した関税は違法であり、支払い済みの関税を全額返還するよう求めています。
実は現在、最高裁でトランプ関税の合法性を問う別の訴訟が進行中で、11月の口頭弁論では、保守派・リベラル派を問わず複数の判事が政権側の主張に懐疑的な姿勢を見せました。もし最高裁が「違法」と判断すれば、900億ドル以上の関税が返還される可能性があります。
コストコが今、訴訟に踏み切った背景には、12月中旬に迫る「関税確定」の期限がありました。この期限を過ぎると、たとえ最高裁で関税が違法と判断されても、払い戻しを受けられない可能性がある。だから「返金の列に並ぶ権利」を確保するために、コストコは動いたのです。

「恐怖」から「計算」へ――企業の姿勢が変わりつつある
ここで注目すべきは、立ち上がったのがコストコだけではないという点です。
化粧品大手のレブロン、食品メーカーのバンブルビー、バイクで知られるカワサキなど、複数の企業がすでに関税返還を求める訴訟を起こしています。コストコは、その中で最も知名度の高い企業として名乗りを上げたことになります。
ジョージタウン大学で通商法を研究するマーク・ブッシュ教授は、こう指摘しています。「大企業が公然と砂の中から頭を出したのは、これが初めてだ」と。
企業は合理的です。トランプ政権との対立リスクと、関税による損失リスク。その天秤が、今まさに傾き始めているのかもしれません。
トランプ陣営にも亀裂が走っている
興味深いことに、トランプ氏を長年支持してきた共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(通称MTG)が、11月下旬に議員辞職を発表しました。
辞職の背景について彼女自身は、エプスタイン関連文書の公開を巡ってトランプ氏との関係が決定的に悪化し、『裏切り者』『狂人』などと激しく非難されたことを挙げています。
これまでMAGA運動の象徴的存在だった彼女が、トランプ氏と決裂して去っていく。この事実は、トランプ陣営の内部にも亀裂が生じていることを示唆しています。
もちろん、これをもって「トランプ一強の終焉」と断言するのは時期尚早でしょう。しかし、かつては絶対的だった「トランプに逆らえない空気」が、少しずつ変わりつつあるのは確かです。
ビジネスは「予測不能」を嫌う
経済とは正直なものです。
企業が求めているのは、予測可能で安定したルール。「今日は10%、明日は25%、来週は撤回」といった気まぐれな関税政策は、ビジネスにとって最大のリスク要因となります。

コストコの訴訟文書には、「関税が場当たり的に発令され、修正され、停止され、再び課される中で、市場が振り回されてきた」という一節があります。これは、多くの企業経営者の本音を代弁しているのではないでしょうか。
もし最高裁がトランプ関税に「違法」の判断を下したら、どうなるのか。大統領がこれまで振りかざしてきた「関税」という切り札は、大きく力を失うことになります。
政治の混乱が経済にどう影響するのか。そして経済界の「静かな反乱」が、政治をどう変えていくのか。このニュースは、僕たちの生活にも直結するテーマです。引き続き注視していきたいと思います。

