左右両派から総スカン、クシュナー氏が嫌われる3つの理由

ここまでの2回の投稿で、ジャレッド・クシュナー氏の華麗なる戦略と、巨額のマネーを動かすビジネス手腕についてお話ししてきました。

表層的には「完璧なスーパーエリート」に見えるクシュナー氏。でも実は、現地アメリカでの彼の評判は散々なんです。民主党からも、そして身内であるはずのトランプ支持者からも「嫌われ者」扱いされています。

── なぜ彼は、これほどまでに愛されないのか

今回は、アメリカ国民が彼に向ける冷ややかな視線の正体を掘り下げてみましょう。

愛されない理由その1:「義理親の七光り」と「公私混同」への反感

アメリカは実力主義の国ですが、それ以上に「フェアであること」を重視します。

クシュナー氏が最も嫌われる理由は、彼がホワイトハウスの重要ポストに就いた理由が「トランプの娘と結婚したから」に他ならないと見られている点です。

選挙で選ばれたわけでもなく、外交の経験もない彼が、国家の最高機密に触れ、中東政策を取り仕切る──これに対して「縁故採用(ネポティズム)の極みだ」という批判が消えることはありませんでした。

さらに、政権中枢にいながら自身のビジネスに有利になるような外交を行っていたのではないかという疑惑も常に囁かれています。特にサウジアラビアからの巨額出資については「国の外交を自分の財布のために利用した」と見る人が多く、これが一般市民の怒りを買っているのです。

愛されない理由その2:元々は「悪徳大家」だった過去

彼のエリート然としたルックスからは想像できませんが、政界入りする前の彼は、ニューヨークやニュージャージーで不動産経営をしていました。ところが、当時の評判は「スラムロード(悪徳大家)」という不名誉なものでした。

彼が所有していたアパートでは、ネズミの大量発生や設備の不備が放置され、住人たちが悲鳴を上げていたという報道が多数あります。さらに家賃を滞納した住人に対して容赦なく訴訟を起こすなど、冷徹な管理手法をとっていたことでも知られています。

トランプ氏も元は同じく不動産王ですが、彼には現場の作業員と気さくに話すような「人たらし」な一面がありました。でもクシュナー氏にはそうした愛嬌がない。ただ冷たく利益を追求する姿が、「庶民の敵」として記憶されてしまっているのです。

愛されない理由その3:味方からも不審がられる「不気味なロボット」

普通、どんなに嫌われている政治家でも、自党の支持者からは愛されるもの。ただ、クシュナー氏が特殊なのは、熱烈なトランプ支持者(MAGA層)からも「信用できない」と思われている点です。

元々リベラルな民主党支持者だった過去があるため、保守派からは「トランプを操るスパイ」「グローバリスト」と陰口を叩かれてきました。加えて、彼の話す様子があまりに感情に乏しく、表情が変わらないことから、メディアやコメディ番組では「ボーイ・ロボット(ロボット少年)」や「蝋人形」と揶揄されることさえあります。

人間味が感じられず、何を考えているかわからない不気味さ。その圧倒的な実績とは裏腹に、「縁故」「冷徹」「不気味」というイメージで、アメリカ国内では四面楚歌に近い評価を受けているクシュナー氏。

しかし、そんな評判など意に介さず、淡々と巨額のビジネスを進めるメンタルの強さこそが、彼の本当の恐ろしさなのかもしれません。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。