空母の上でチャートを見つめる兵士たち──米軍で広がる仮想通貨ブームの正体

軍隊と聞いて、何を思い浮かべますか?

規律、訓練、国を守る使命。そんな厳格な世界で今、意外な「熱狂」が広がっています。それが仮想通貨への投資です。

過日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記事には、かなり驚かされました。空母の艦上や基地の兵舎で、若い兵士たちがスマホを握りしめ、仮想通貨のチャートに一喜一憂している。そんな光景がアメリカの軍で日常になりつつあるというのです。

米軍基地が「投資サロン」に変わる時

記事によると、暗号資産取引報告の多かった上位20の郵便番号のうち、米軍基地周辺の住所が多数を占めていたのだとか。

兵士たちは仲間同士で投資のノウハウを共有し、「今が買い」のコイン情報を交換し合っているのです。厳しい訓練の合間、かつてならトランプ遊び(※カードゲームの方です)や雑誌で暇をつぶしていた時間が、今は「スマホでのトレード」に変わっています。

「投資こそが富を得る手段だ」──そんな文化が、軍という閉じたコミュニティの中で急速に浸透しているのです。

戦場という極限状態に近い場所にいる彼らが、デジタルの世界での資産形成に夢を見ている。このコントラストに、現代という時代の特異さを感じずにはいられません。

「安定」しているからギャンブルに走るという逆説

それにしても投資にハマるのが、よりによって軍人とは……なんだか不思議に思いませんか?実は、そこには非常に納得の理由がありました。

◇安定した給与体系

軍人は給料が明確で、生活の基盤が保証されています。

◇若さとコミュニティ

独身の若者が多く、仲間内での「あいつが儲けたなら俺も」というライバル心や連帯感が強い。

◇スマホ一つで完結

場所を選ばず、少額からでも夢を見られる手軽さ。

つまり、「生活の不安がない(ダウンサイドが守られている)」からこそ、彼らは「大きなリターン(アップサイド)」を狙ってリスクを取れるのです。

一般的に、不安定な職業の人ほどギャンブル的な投資に走ると思われがちですが、実は逆なんですね。

「毎月必ず給料が入る」という安心感が、彼らの背中を仮想通貨市場へと強く押している。これは、僕たち個人の投資戦略を考える上でも、非常に示唆に富んだ事実ではないでしょうか。

「怪しいもの」が「国家公認の資産」へ格上げ

そしてもう一つ、この熱狂を後押ししている巨大な要因があります。トランプ政権の動きです。

2025年3月、トランプ政権は「米国戦略ビットコイン準備金(US Strategic Bitcoin Reserve)」の設立を命じる大統領令に署名しました。政府が没収などで取得したビットコインを、国の準備資産として扱うという画期的な政策です。

これは何を意味するのでしょうか。

「怪しい投機対象」や「ギャンブル」だと思われていた仮想通貨が、「アメリカという超大国が保有する資産」へと格上げされようとしているのです。

軍の最高司令官である大統領自身が、「仮想通貨は是だ」と公に示している。現場の兵士たちにとってどれほど強力な「お墨付き」はありません。

もちろん、仮想通貨市場の乱高下には注意が必要です。一夜にして価値が急落するリスクは常にあります。でも本質はそこではないんです。

重要なのは、「国を守る兵士たちが、ドルだけでなくデジタル資産に未来を託し始めている」という事実。かつて一部の先進的な人たちだけのものだった仮想通貨が、制度化された資産へと変わりつつあります。

僕たちは今、通貨や資産の概念が根底から覆るような、歴史的な転換点に立っているのかもしれません。米軍基地で起きているこの熱狂は、決して海の向こうの他人事ではないのです。

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この記事を書いた人

総合商社で中近東および中南米向けの機械輸出ビジネスに従事した後、大手コンサルティングファームにてディレクターとして日本企業および欧米企業のグローバルプロジェクトを担当。2012年よりロサンゼルスに活動拠点を移し、2人の仲間とともに「Exa Innovation Studio(EIS)」を創業。

現在は、EISで日米欧の新規事業開発に取り組むと同時に、2020年に創業した日本特有の天然素材と道具を組み合わせたウェルネスブランド「Shikohin」および新規事業育成ファンド「E-studio」の経営に従事 。

起業家の世界的ネットワークであるEntrepreneurs’ Organization(EO)のロサンゼルスおよびラテンアメリカ・チャプターのメンバーとして、多くの若手起業家のコーチングに取り組む。2016年よりアクセラレーター「Founders Boost」でメンターを務め、多くのスタートアップのアドバイザーを務める。

慶應義塾大学環境情報学部卒業。